この記事をまとめると
■2022年1月からの累計販売台数が363台だったヒョンデだがこれはまずまずの結果といえそうだ
■ネットのみでの販売や原宿への出店など、ヒョンデは若者に狙いを絞った戦略をとっている
■ASEAN地域での積極的な取り組みで「日本超え」を狙っている
累計販売台数363台は決して少なくない!?
2022年2月に正式に日本市場での乗用車再販売を開始した韓国ヒョンデ自動車。いまのところBEV(バッテリー電気自動車)のアイオニック5と、FCEV(燃料電池車)のネッソをオンラインのみで販売している。
JAIA(日本自動車輸入組合)の統計によると、2022年9月単月のヒョンデブランドの乗用車販売台数は147台。2022年1月からの累計販売台数は363台となっている。この結果だけを見れば、「たいしたことないじゃないか」と思われる人もいるだろうが、とくに大々的な宣伝を行っているわけでもなく、オンライン販売に特化しているということを考えれば、まずまずの結果と見ていいだろう。というか、ヒョンデはすぐに結果を出そうとしていないのはその動きを見て強く感じる。
正式な日本市場での乗用車再販売開始以前に、すでにカーシェアリングサービスに車両を提供しており、その利用実績を見ると、若い人の利用が目立っていたとのこと。日本市場再販売に先駆けた入念な事前リサーチも十分行っていたのである。原宿にショールームをオープンさせたのも、若い世代の“声”を聞きたいということのほうが大きいかもしれない。
すぐに販売台数で結果を出したいのならば、リアル、つまり販売代理店を全国規模で設けて一般的な店頭売りというものを行うだろう。ただ、現状で手広く販路を拡大するには、それなりにコストをかけなければならない。そこへのコストをまだかけないところに、ヒョンデはまだ本気を出していないのではないかと考えるのである。つまり、現状の動きはオンライン販売に抵抗もない、最新トレンドへの感度の良い人や、次の世代へ向けたものなのである。
韓国の自動車産業が日本の自動車産業と比べ、歴史的な遅れをとっていることは間違いない事実。そのため、筆者のような日本車が世界中で光り輝いていたころを知っている世代ほど、当時の韓国車は激安車イメージが世界的に強かったこともあり、韓国車を見下す傾向が強い、つまり、日本車より格下というイメージが定着している。さらに、韓国と日本の間には政治問題が山積している。嫌韓、反日をお互い標ぼうし、反目しあう人たちも世代が古いほど目立ち、この政治的な対立も韓国車へのイメージを捻じ曲げているように見える。
しかし、いまの10代や20代の日韓両国の若者には、お互いの国に対し悪いイメージを持っている人はほとんど存在しない。ヒョンデはこのようなニュートラルな視点を持った世代をターゲット、つまり少し先の需要を見越して動いているように見えるのは筆者だけではないはずだ。
日本の若者は韓国のエンターテインメントやグルメ、コスメなど韓国の文化が大好きな人が多い(韓国の若者はその逆の人が目立つ)。しかも、すでに「モノづくり大国」から卒業した日本で生まれ、そして育ってきている。つまり、日本の家電製品や自動車が世界的にとびぬけてクールで高性能なものとしてもてはやされ、それを日本国内で生産し出荷していたことなどは歴史の一部としか認識していない。
身のまわりにある家電製品などは、たとえ日本ブランドであっても中国、韓国、ベトナム、タイ製ばかりである。しかも、世界に目を向ければ、韓国ブランドのほうが存在は目立っているジャンルも少なくない。筆者が海外へ行くと、「日本人か、お前の国の製品使っているよ」と、韓国ブランドを羅列されることは珍しくない。日本で暮らす日本人でも身近な日本製品といえば、日本車ぐらいしかすでに存在しないのである。