現役カーモデラーがマンツーマンで教えてくれる小中学生向けイベント
2次元で描かれたクルマのデザインを粘土を削って実際の形にするのがカーモデラーの仕事だ。そんなクレイモデル作りを体験できるイベントがある。日本のモデラーが所属する日本カーモデラー協会(JCMA)および日本自動車工業会の主催によって、科学技術館で開催される「ワクエコ・力―モデラー教室」だ。
残念ながら大人向けではなく、小・中学生を対象としたイベントで、毎年2、3回開催されている。内容はズバリ、プロのカーモデラーと一緒にクレイモデル作りに挑戦するというもの。科学技術館のホームページでしか募集していないにかかわらず、定員の3倍もの申し込みが集まるほどの人気教室だ。
今回取材にうかがったのは、3月20日に行なわれた2017年の第1回目。教室には午前の部の「お手軽コース」と、午後の部の「じっくりコース」の2つが用意されており、「じっくりコース」を取材してみた。
講師はもちろん各メーカーの現役モデラーの方々。子供ひとりに、モデラーひとりが専属でつくという贅沢な環境だ。
お手軽コースは、ふらっと来てクレイモデル作りを体験してみるといった手軽なものだが、高学年の参加者が中心となるじっくりコースは、かなり本格的な内容。子供たちが各自で作ってみたいモデルのスケッチ(現実にあるクルマから、自分で考えた夢のクルマまで)を持参し、それをプロのモデラーと一緒になって立体化するのだ。
これはつまり、デザイナーが描いたスケッチをモデラーが立体化するという、自動車メーカーでの本物のクルマ作りを疑似体験するようなものである。
ちなみに参加者の中には、モーターショーに出展された某メーカーのコンセプトカーの写真を持参したお子さんも。それを指導するのが、そのメーカーとは違うモデラーだったりするのも面白いところだ。
作業は2時間ほど。まずは、発泡スチロールでできた中子に粘土を盛って、だいたいの形を作っていく。使用するのは、実際の開発の現場で使用されているプロ仕様の工業用粘土だ。60度ぐらいに温めると柔らかくて形が作れ、冷えると固まって削りやすくなる性質がある。
みんな熱い眼差しでとにかく夢中。粘土遊びと言ってしまえばそれまでかもしれないが、目標めざしてまっしぐらな作業は、子供にとっては遊びの範疇をこえた真剣なもの。むしろ子供だからこそ、大人のように迷いはないし、変な理屈も妥協もない。ためらわずにどんどん盛っていく。
そんな子供たちをサポートする講師の方々も、時にリクエストに四苦八苦したり、逆に子供そっちのけで夢中になって手伝ってみたりと、教室全体がとことんのめりこんでいる雰囲気だ。