コーナーリング中のロールを抑える
世のなかにはいろいろなスタビライザーがあります。たとえばビデオカメラの手振れ防止装置もスタビライザーと呼びます。船舶の揺れを減少させるのもスタビライザーといいます。
安定化させる装置を、広く一般的にスタビライザーと呼ぶのです。クルマの場合は横方向のロールを抑えて安定化させるための機構が、スタビライザーです。とてもシンプルで金属的な構造です。
クルマはコーナリングする時にロールします。コーナーの内側にサスペンションが伸びて、コーナーの外側のサスペンションが縮んで、ボディが左右に傾くことになります。スタビライザーは、コーナリングでのロールを抑える働きをします。
その構造はシンプルで、左右のサスペンションを丸棒(スタビライザーバー)で繋ぎ、その丸棒をねじる力でロールを抑えます。ロールが発生しようとしても、丸棒をねじる力に食われて、ロールしにくくなるわけです。
スタビライザーの強さとは、つまり丸棒をねじるときの硬さのことです。硬いほうがねじりにくく、スタビライザーの効果が強いことになります。スタビライザーを強くするとロールは少なくなりますが、乗り心地が悪化する部分もあります。
スタビライザーは左右のサスペンションが同じ動きをしている時は何も働きませんが、左右が異なる動きをしたときに作用します。たとえば路面が荒れていてランダムにデコボコがある場合など、サスペンションは十分にストロークできず、路面からのショックを吸収できません。
高級車ではアクティブ・スタビライザーという装備がありますが、それはこの丸棒の中間に電子制御のユニットを入れて、直進時にはスタビライザーをキャンセルしたり、コーナリングでのGが強くなりそうなときにスタビライザーを強めたりするような制御をしています。コーナリングでの安定性と乗り心地を両立させよう、というわけです。
本来ロール角の大きさは、サスペンションのスプリングの強さで決まります。スプリングを硬くするとロール角は小さくなるんです。その代わり、乗り心地は厳しいものになってしまいます。そこでサスペンションのスプリングを硬くすることなく、ロール角を抑えるスタビライザーがとても都合がいいわけです。
ただ必ずしもスタビライザーが必要というわけではなく、ミッドシップやリヤエンジンの後輪のように、エンジンの荷重が乗っていれば重要性は低いのです。