この記事をまとめると
■SUV人気の原点は90年代半ばのアメリカと言われている
■世界的に見て人気ジャンルではあるが、中国ではセダンの人気が根強い
■コンパクトカーが人気な国もあるが徐々にSUVが台頭
SUV人気に火をつけたはアメリカだった
すっかり当たり前の光景になってしまったようだ。
最近、日本で発表される新型車はSUVが目立ち、セダンは少数派となっている。それにしても、まさか日本でもこんなに急にSUVシフトが進むとは、ユーザーも、そして自動車メーカーも想像していなかったのではないだろうか。
時代を振り返ってみると、SUV人気の原点は90年代半ばのアメリカだった。
当時、筆者はアメリカの南東部に居住していたが、ジープ「チェロキー」、GMシボレー「タホ」「サバーバン」、そしてフォード「エクスプローラー」の人気が目立った。また、SUVとラダーフレーム構造を共通化する、ミッドサイズとフルサイズのピックアップトラックも需要もうなぎ上りとなった。
こうしたアメ車の動きに対応するように、日系メーカーとドイツ系メーカーも90年代後半から2000年代初めにかけて、一気にSUVシフトを仕掛けてきた。トヨタ「ハイランダー」、ホンダ「パイロット」、ポルシェ「カイエン」、BMW「X5」が人気車種として定着するようになる。こうしたアメリカ発のSUVシフトが、2000年代中盤から後半にかけて、日本市場にも上陸し、その流れがいままで続いているという状況だ。
一方、いまや自動車の製造と販売で世界第一位となった中国でも、アメリカのSUVシフトの影響が色濃く出ている。それでも、中国ではセダンの需要が高い。
そもそも、2000年代に入って中国政府の民主化政策によって一気に自動車産業が拡大した中国では、庶民の憧れは政府高官などが乗る、ドイツ製の高級セダンだった。日本車だとカムリが人気で、しかも装飾がかなり目立つ仕様が好まれる傾向が強かった。
また、中国ではリムジンに対する憧れと需要も強く、メルセデス・ベンツの小型・中型車でも、ロングホイールベースの「L」を設定するなど、中国市場向け仕様の現地化を進めてきたという流れがある。
欧州に目を向けてみると、以前は3ドア・5ドアハッチバックのモデルが多かったが、最近ではやはり、欧州でも売れ筋はSUVへとシフトしている印象がある。それでも、欧州ではハッチバックやセダンは一定数の支持を受けている。
そのほか、インドや南米などでは、AセグメントやBセグメントのコンパクトカーの需要が高く、Cセグメント以上になるとセダンからSUVへのシフトが起こっていると感じる。
このように、グローバルで明らかにSUVシフトが浸透してきており、国や地域それぞれで特色も持ったモデルが徐々に減っている状況だといえるだろう。