この記事をまとめると
■跳ね上げ式ドアの発祥は1954年メルセデス・ベンツ300SL
■以後、プロポーザルモデルでさまざまな跳ね上げ式ドアのモデルが提案された
■ランボルギーニが有名だが、それ以外のレアな跳ね上げドアモデルも紹介
プロポーザルモデルならなんでもあり!?
1954年に発売されたメルセデス・ベンツ300SLが採用していた跳ね上げ式ドア、これがカモメの翼に似ていることから「ガルウィングドア」と呼ばれ、以後さまざまなクルマが「似たような」ドアやトランクフードを取り入れてきました。メルセデスの場合は、パイプフレームの設計上サイドシルが太くなってしまい、乗降時にそれをクリアするための機構としたものでした。ここでご紹介するガルウィングを取り入れたクルマたちは、はてさてどんな思惑だったのでしょうか。
1)ランボルギーニ・マルツァル
ランボルギーニは、メーカー規模に比べ過剰なほどプロポーザル(コンセプト)モデルを作っているため、「マルツァル」といわれてすぐにこの巨大ガルウィング車を思い浮かべられる方はかなりのマニアかもしれません。ベルトーネがフェルッチオ・ランボルギーニの依頼をうけて製作したモデルで、実際の指揮をとったのはマルチェロ・ガンディーニとされています。
巨大なガルウィングドアは、4シーターのマルツァルにとって前席・後席いっぺんに乗り降りできるという画期的なアイディアだったのかもしれません。ただ、ドアを持ち上げているダンパーに目を凝らせば「大丈夫か?」と心配になるような細さ。ガラスでなくパースペックスだったとしても相当な重さでしょうからね。
もっとも、プロポーザルモデルだし、モナコのグレース王妃も喜んで乗ったってくらいですから、そういう突っ込みは野暮。素直に「カッケー!」と喜ぶべきガルウィングの最たる例でしょう。
2)イズデラ・コメンダトーレ112i
イズデラもまたマニアックなスポーツカーメーカー。といっても、2モデルくらいしかリリースしていないので一般的なクルマ好きなら知らなくても不思議ではありません。コメンダトーレ以前に作ってそこそこ売れたインペレーター108(の前身がCW311)もガルウィングドアを採用しており、相当こだわりがあるのかと思われ。
創設者のエーベルハルト・シュルツはメルセデス・ベンツやポルシェでチーフを務めた腕っこきのエンジニア。ここがキモで、シュルツはメルセデス・ベンツのプロポーザルモデルで同じくガルウィングを採用していたC-111の影響を受けていたのかもしれません。
コメンダトーレはドアどころか、リヤのエンジンフードも左右2分割の横ヒンジ。それゆえドア&フードを全開にした姿はあたかも魚の開きかのような見え方。
設計思想とか聞くと軽く半日くらいかかりそうで面倒くさそうですが、前述の300SL→C-111→CW311→コメンダトーレの順に並べてみると「正常進化」かのような説得力! たったの1台しか作られなかったコメンダトーレですが、見方によってはじつに感慨深いモデルといえるでしょう。