この記事をまとめると
■ウェッジシェイプとはクルマのスタイリングを指す言葉
■1970〜80年代が全盛期だった
■21世紀に入るとトレンドではなくなっていった
ジウジアーロデザインのクルマにも多数採用された
最近あまり耳にしなくなった自動車用語のひとつに、ウェッジシェイプがある。日本語に直すと楔形、つまりフロントからリヤに向かってせり上がっていくラインを基調としたスタイリングのことだ。
かつてはこのウェッジシェイプ、多くの車種が採用していた。世界各地で高速道路が発達し、それに合わせてクルマも高性能化。スピード感のあるデザインが求められたことが大きい。とりわけ1970〜80年代が全盛期だった。
ウェッジシェイプと言われてまず思い出すのがスーパーカー。なかでもベルトーネがデザインした車種は、ここが鋭角的なデザインを得意としていたためもあるが、ランボルギーニ・カウンタック、ランチア・ストラトス、マセラティ・カムシンなど、尖った形が多かった。
ジウジアーロもまた、ウェッジシェイプの作品を多く送り出してきた。スーパーカーではロータス・エスプリの初期型があるし、日本車でもいすゞ初代ピアッツァ、スバル・アルシオーネSVXなどを手がけた。
数あるウェッジシェイプのなかでも個人的に衝撃を受けたのは、SVXの前の代になる初代アルシオーネとアルファ・ロメオ2代目ジュリエッタだ。いずれも3ボックススタイルで、トランクリッドまでせり上がりが続いていて、リヤエンドのリップスポイラーで終わるという徹底ぶりだった。
しかし21世紀に入ると、ウェッジシェイプはトレンドではなくなっていく。衝突安全対策でノーズを薄くするのが難しくなり、地球環境対策が厳しくなってパワーとスピードを追い求める状況ではなくなりつつあることが大きいだろう。
たしかに現行の日本車でも、トヨタ・プリウスや三菱エクリプスクロスなど、ウェッジシェイプを取り入れた車種はある。でも採用の理由は1970年代とは違っていて、前者は2代目で確立したトライアングルシルエットの発展形。後者は三菱らしさを強調すべくギャランGTOをヒントとしたものだ。
ただエクリプスクロスに限らず、最近のカーデザインは過去の名車をモチーフとすることが多いので、いつの日か再びウェッジシェイプが注目されるかもしれない。