この記事をまとめると
■高級車やレーシングカーに使用される「カーボン」とは何かを解説
■軽量で丈夫なので、クルマ以外にも多く使われている
■EVの普及によって、今後さらに普及する可能性がある
軽量で強靭なハイテク素材「カーボン」についておさらい
最近、「カーボン」というと、「カーボンニュートラル」という言葉を連想する人が少なくないかもしれない。菅政権が主要な政策として打ち出した「2050年カーボンニュートラル」があるからだ。
このカーボンニュートラルのカーボンとは、CO2(二酸化炭素)を示す。カーボンニュートラルとは、地球上で人類が生活していくために必要な工場や交通などから排出される二酸化炭素の量を減らし、その代わりに森林などを保護したり新たに育成することでCO2の吸収量を増やし、結果として排出量と吸収量を相殺するという考え方だ。
一方、クルマ好きが随分前から「カーボン」と呼んでいるのは、二酸化炭素のことではない。たとえば、スポーツカーのボンネットやルーフにカーボン。高級車のインテリアでステアリング・ドアパネル・ダッシュボードなどにカーボン。もちろん、レーシングカーやレーシングバイクにもカーボン。さらには、腕時計や高級文房具にもカーボン。
といった感じで、使われている「カーボン」、または「カーボンファイバー」とは、CFRP(カーボン・ファイバー・レインフォースド・プラスティック)のことだ。日本語では、炭素繊維強化樹脂と訳されることが多い。その名の通り、炭素の繊維を使った樹脂製品である。
なぜ、CFRPを使うかというと、鉄やアルミ合金と比べて軽量なのに強靭だからだ。だが、あくまでも樹脂をベースとして成形するので、丈夫さという点では、金属とはべつの観点で見る必要がある。
その上で、スポーツカーやレーシングマシンの車体でCFRPを使う場合が多いのは、軽量かつ強靭さが走りの良さやラップタイムに直結するからだ。またスポーツカーのルーフなどボディパーツにCFRP使うのは、クルマの重心より高い位置にあるパーツを軽量かつ強靭にして旋回性など運動性能を上げるためだ。高級車の場合は、プレミアム感を演出するためのアイテムという意味合いが強い。
そのCFRPには種類があるのだが、これまで多く使われてきたのは、エポキシ系樹脂を使う熱硬化性CFRPと呼ばれるものだ。成形に対する自由度が大きいので、さまざまな形の製品でもちいられている手法だ。このほか、熱可塑性CFRPという種類もある。日本メーカーが自動車向け製品として開発に注力してきたもので、熱硬化性CFRPよりもコストが安く、また成形に要する時間が少ないことが特長だ。2010年代後半から海外メーカー向けのボディの一部として採用され、量産が始まった。
今後、クルマの電動化はBEV(バッテリー電気自動車)が主流になってきそうだが、そうなると大量の電池を搭載することでクルマ全体の重量が重くなってしまう。そうなると、ガソリン車やハイブリッド車に比べて車体やボディの軽量化が重要になってくる。
CFRPの出番もこれからさらに増えてきそうだ。