スポーツカー以外は不必要? トルセンとかヘリカルとか謎の用語が飛び交う「LSD」とは (1/2ページ)

この記事をまとめると

■スポーツカーなどでよく聞くLSDとは何かについて解説している

■LSDは簡単にいえばデファレンシャルギヤの働きを制限する装置

■装置の仕組みはいくつかありクルマの目的で使い分けられる

スムースにクルマが曲がるための装置の働きを「制限」するもの

 自動車好き、走り好きなら「LSD」の3文字に着目する人も少なくないだろう。LSD、すなわちLimited slip differential、日本語訳すれば差動制限装置のことで、差動とは旋回のため左右輪の回転数を変えるデファレンシャルギヤのことを指している。デファレンシャルギヤの必要性については、旋回中に左右輪の回転数が異なること(旋回外輪が旋回内輪より多く回転しなければならない)に対処したものであることはよく知られているが、LSDは、その旋回運動をスムースに行うために設けられたデファレンシャルギヤの働きを制限するための装置である。

 では、なぜデファレンシャルギヤの差動を制限する装置があるのか、ということになるのだが、デファレンシャルギヤには旋回中の外輪と内輪に対して、それぞれ適切な回転数になるよう回転差を作り出す働きがある反面、片輪が無負荷、あるいはそれに近い状態となった場合(片輪が低μ路と接地した状態、あるいは溝などに落ちた状態)には、その構造上、反対側の接地した車輪に駆動力を伝えることができなくなってしまう。

 LSDは、片側のタイヤが空転(無負荷)する状態になった場合、左右の回転差を作り出しているデファレンシャルギヤの差動を制限し、もう一方の接地しているタイヤに駆動力を伝える装置である。極端に言えば、スムースな旋回が出来るよう左右輪に回転差を作り出しているデファレンシャルギヤの働きを制限し、代わりに駆動力を伝えるようにした装置である。

 ただし、この差動制限を行う範囲(強弱)は、LSDの方式や設定により、異なったものにすることができる。もっとも極端な例は、ロックドデフで、その名のとおり差動機能を完全になくしたデファレンシャルギヤだ。左右輪の接地状態にかかわらず、常に100%の駆動力を左右輪に伝えることはできるが、旋回中の回転差を作り出せないため、旋回運動は非常にギクシャクとしたものになってしまう。この方式は、常に最速を目指すレーシングカー、あるいは泥濘路などで確実な走破性を確保しなければならないオフロード型4WD車で、常時固定式、あるいは選択作業によってデファレンシャル機能の働きを完全に制限する方式である。

 逆に、旋回中、一方のタイヤが空転し、その反対側のタイヤに駆動力が伝わらなくなるのは困るが、だからといってデフ機能を完全に制限してしまうのも具合が悪い、ということで考え出されたのが差動制限装置、LSDである。


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