この記事をまとめると
■原油価格の高騰がバス業界・タクシー業界に打撃を与えている
■日本でも中国製BEVバスが稼働しており、整備コストなどの面から注目されている
■日本はバス・タクシーでも電動化が遅れており先行きは不透明だ
バス・タクシー業界を直撃する原油価格の高騰
原油価格の高騰により、世界的に燃料代の価格高騰が社会問題となっており、日本でも当然ながらガソリンや軽油(とくに軽油代)の高騰が激しくなっている。
国内では、新型コロナウイルスワクチンの接種が一気にアメリカを抜くなど、感染拡大が落ち着きを見せ、いざ本格的活動再開へと向かおうとしていたタクシーやバス業界を、今回の燃料費高騰が直撃しているようである。
「街なかで貸切バスが連なる光景を久しぶりに見るようになりました。遠足や修学旅行などがメインのようですが、せっかくバスが動き始めたのに軽油代の高騰です。都内の均一区間なら210円(現金)の運賃などで運航している路線バスのほうが、軽油代高騰の影響は大きいとの話もあります」とは業界事情通。
タクシーについて聞くと、「タクシーの主要燃料となるLPガスも当然ながら価格高騰が続いています。LPガス業界関係者のなかには『この騒ぎで一気にタクシーがBEV(バッテリー電気自動車)化してしまうのではないか』と不安視する声もあるようです」(事情通)。
タクシーについては、業界自体がBEVに強い興味を示しているわけでもない。地政学的に見ても、そして世界でもっともBEVの普及が進んでいるということを考慮しても、中国メーカー製のBEVを導入するのが普及の早道といえるだろう。
路線バスにおいては、すでに複数の中華系ブランドのBEV路線バスが営業運行を行っているが、タクシーについてはまだそこまではいっていない(宅配業界では、中華系ブランドの日本でいうところの軽バンのようなBEV商用車の導入を発表しているところがある)。
最近までイギリスのグラスゴーでCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開かれていた。欧米先進国は気候変動対策としてBEVの導入に積極的な姿勢を見せるなか、その先進国メンバーである日本は、COP26の席上でも存在感が薄いというよりは、気候変動対策に消極的として、メディアや市民団体から批判されることもあったようだ。
BEVだけをとっても、積極的な欧州ブランドに比べると、取返しがつかないとも言われるほど出遅れている日系メーカーの現状を考えれば、それも納得してしまう。
ただ日本のバス事業者がBEVに熱い視線を送るのは、残念ながら「気候変動をなんとかしたい」というのがメインではない。BEV路線バスを導入すれば、燃料が軽油から電気に代わるので、いわゆる燃料コストの削減ができるとされているが、それよりもオイル交換など、油脂類の交換が不要になることによるコスト削減のほうが大きいようだ。
バスではターボエンジンがメインとなっている。そのためエンジンオイルの交換頻度も多くなり、しかも1回で使用する量も多い。オイル交換が必要なくなるというだけでも、コスト削減効果は大きいのである。しかも、中華系のBEV路線バスならば、日系のディーゼル路線バス並みの費用負担で導入可能との話もある。