超ハイテク「しゃくとり虫」! ボディが伸び縮みする「アウディ・スカイスフィア」は何目的のコンセプト? (1/2ページ)

この記事をまとめると

アウディが可変ボディ長のコンセプトモデル「スカイスフィア・コンセプト」を発表した

■快適な高速クルージングとシャープな走りを1台の車両で実現することがコンセプト

■1台の車両で相反する性能やハンドリングの実現が可能であることを示唆している

全長が伸び縮みするコンセプトカーをアウディが発表した意味

 来たるべきEV時代を目前に控え、アウディが意欲的なコンセプトカーを発表した。スカイスフィア・コンセプトとネーミングされたモデルで、搭載するモーター出力は456kW(632馬力)、最大トルクは750N・m(76.5kg-m)とすさまじい。

 しかし、アウディがこのモデルでトライしたのは、可変ボディ長(ホイールベース長)だった。ボディ中央部を250mm伸縮させることで、全長を4940mmから5190mmまで変化させるという。アウディは、このボディ長(というより実際の狙いはホイールベース長)の変化で何を意図したかといえば、スタビリティ(直進安定性)とアジリティ(旋回の自由度)の両立と見てよいだろう。

 アダプティブホイールベースと名付けられたこの試みは、ロングホイールベース時は「GTモード」、ショートホイールベース時は「スポーツモード」という考え方で、GTモード時はロングホイールベースによる高いスタビリティ(同時に、室内長が伸びるので乗員は広い居住空間を得ることができる)、スポーツモード時はショートホイールベースによる旋回性のよさ(4WS機構も備えているという。経験的に転舵初期は逆相、旋回時は同相操舵で作用すると思われる)で、キビキビとした走りを作りだすことが狙いとなっている。

 言ってみれば、圧倒的な動力性能に支えられた快適な高速クルージング性能と、切れのよいスポーツカーの走りを1台の車両で実現することがコンセプトの車両と捉えてよいのだろう。ただし、あくまでコンセプトの提示が目的の車両であるため、たとえばホイールベースの伸張によるシャシー剛性、強度の変化が実際どの程度なのかは定かでないが、現代の車両設計技術をもってすれば、それほど難しい課題でもないだろう。

 あくまで、ホイールベースの変化に伴う車両性格の変化に着目したコンセプトカーだが、ホイールベースと車両性格(ハンドリング)の関係に目を向ければ、すでに1990年代に試みられている。まったく同タイミングだったが、メルセデス・ベンツCクラス(W202)とBMW3シリーズ(E36)で、ボディ全長4500mmに対しホイールベース2700mm(W202は2690mm)の設定だった。

 日本車で当該サイズの全長は、トヨタならコロナ(190系)、日産ならブルーバード(U13)だったが、ともにFF方式でありベンツ、BMWとは駆動方式が異なることは留意事項だが、ホイールベースは2580mm(コロナ)、2620mm(ブルーバード)とかなり短めの設定だった。

 長いホイールベースはスタビリティを向上させる代わりに回頭性、旋回性を損なうシャシーディメンションと考えられていたが、ベンツやBMWは前後オーバーハング(重量)を切り詰めることで、旋回性能に優れたハンドリングを作り出していた。

 ちなみに、日本車のFRで真っ先にこのことに気づいた(実践した)のはトヨタ・プログレ(全長4500mm、ホイールベース2780mm)で、当時のトヨタ車中では異例なほどに優れたハンドリング性能を有していた。


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