25年誕生が早すぎた「たった282台」の名車「スバル・ドミンゴアラジン」! いまならバカ売れ必至の衝撃アウトドア車の中身とは (1/2ページ)

この記事をまとめると

■かつてスバルには屋根の上で寝られる小型ワンボックス車、ドミンゴアラジンが存在した

■当時は282台しか売れなかったものの、いま登場したらヒットしそうな内容だ

ドミンゴアラジン、またそのベース車ドミンゴについて解説する

このクオリティで当時の価格は149万円〜225万円!

 コロナ禍でも楽しみ安いレジャーとして盛り上がったキャンプブームは、クルマ業界にも大きな影響を与えた。2020年の夏頃からキャンパー仕様の人気が急上昇。車両価格と維持費が安い軽自動車のキャンパーや、キャンピングカー専門業者によるコンバージョンも人気で、空前のキャンパーブームとなっているが、過去を振り返ると、自動車メーカーが最初からキャンピングカーとしての機能を架装したモデルもわずかに存在する。

 そこで今回ピックアップしたのはスバルの「ドミンゴアラジン」。1996年に発売された「屋根の上で寝られる機能を持つ軽ベースの小型ワンボックス車」だ。見た目と名前がコミカルだし、旧規格の軽自動車ベースのワンボックスで屋根の上に人が寝られる空間を作るという商品企画がブッ飛びすぎていた。同じく屋根の上で寝られる機能を備えたボンゴフレンディと並び、昔のオモシログルマを振り返る的な企画でクルマメディアに登場する機会が多いので、すぐに思い出せるクルマ好きも多いだろう。

 珍車扱いされがちなドミンゴアラジンだが、根はクソ真面目なスバルが作っただけに、今見ても細部の作り込みはなかなかすごい。注目の天井部分にはグラスファイバー製の軽量ルーフを設置した。停車時にはこれをリフトアップして、大人と子供、それぞれ1人ずつが寝転ぶことを想定して設計されている。父と子がアウトドア現場で冒険気分を味わうシーンを想定したのだろう。広々しているとは言えないまでも、親密な関係にある間柄なら大人2人でも普通に寝られる空間を確保。リフトアップした状態ならサイド部分の窓が開けられるので、寝転びながら星空を観察することもできた。天井にはアシストグリップや室内灯も装備される。テールゲートにハシゴが装備されるが、これはリフトアップの作業やメンテ時用で、天井部屋へは室内からアクセスする。

 標準仕様の「アラジンリフトアップ」のほか「アラジンキャンパー」というキャンピングカー仕様のグレードも設定。8ナンバー登録に必要なシンクや水道タンク、コンセント電源やプライバシーを守れるカーテンなども装備され、これ1台でキャンピングカーとして立派に使える仕様となっていた。当時の新車価格はキャンパー仕様ではないアラジンは2駆のMTで149万円、最上級キャンパーの4駆のATでも225万円と、今だったら爆売れするほど安い。

 同様の機構を持つミニバンの発売としては、マツダのボンゴフレンディのオートフリートップに先を越されたが、制約の多い軽ワンボックスベースのボディでの創意工夫ぶりが随所に見られる力作だ。

 ちなみにリフトアップやキャンパー仕様などの架装を手がけたのは桐生工業というスバル車のコンバージョン制作専門サプライヤーで、1961年から初代サンバーバン/トラックのボディパーツの生産を請け負い、サンバーベースのダンプや保冷車など、さまざまな特装車作りで名を馳せた職人集団である。

 また、桐生工業はスバルのエンジン生産でも実績があり、2016年からEJ20エンジンの組み立てが移管されたことでも有名。今でもスバル製エンジンのリビルド機の生産も請け負い、パワートレインの蘇生工場としても知られる。ドミンゴアラジンがわずか282台しか作られなかったのは、大量生産が難しいという事情もあった。

 ドミンゴアラジンはスバル車の架装専門の特殊技術を持った職人たちの手によって作られたので、スバルファンからは伝説的な名車のひとつとして愛されている。


マリオ高野 MARIO TAKANO

SUBARU BRZ GT300公式応援団長(2013年~)

愛車
初代インプレッサWRX(新車から28年目)/先代インプレッサG4 1.6i 5速MT(新車から8年目)/新型BRZ Rグレード 6速MT
趣味
茶道(裏千家)、熱帯魚飼育(キャリア40年)、筋トレ(デッドリフトMAX200kg)
好きな有名人
長渕 剛 、清原和博

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