AMGとMは世界的に有名な2大巨頭!
自動車メーカーのいわゆる特殊部隊は日本のみならず世界各国に存在しているわけだが、むしろ存在感がよりクッキリしてるのはヨーロッパの方かも知れない。たとえばドイツ。メルセデス・ベンツの“メルセデスAMG”とBMWの“BMW M”は、その2大巨頭といえる。
AMGは、元は1967年に創業したレース用エンジンの設計会社であり、独立したチューナーだった。ダイムラー・ベンツ社のプライベーター向けレース用エンジン開発部門にいたふたりのエンジニアが、いくら成果をあげても1955年以来ワークス活動を休止したままで、本気でレースに復帰しようとしない会社に見切りをつけて起こしたものだ。
その名が一気に高まったのは1971年のスパ・フランコルシャン24時間レース。AMGが持ち込んだメルセデス・ベンツ300SEL6.3は排気量を6.8リッターに上げるとともにヘッドにも手を加え、ノーマルの倍近い428馬力をまで引き上げていて、大柄な車体ながら総合2位、クラス優勝を果たしたのだ。
当然ながらユーザー達はAMGの門を叩き、AMGは総合的なチューナー兼レースファクトリーとして発展。ダイムラー・ベンツとの関係も次第に密接になり、1980年代中頃には公式的にAMG製のパーツが採用されることになり、レースのワークスチームとしての活動も担うようになっていく。
1987年からの190E、1993年からの初代CクラスでのDTMでの大活躍はあまりにも有名だ。また同じ頃に初の共同開発車であるCクラスベースのC36が誕生し、世界的にも高い評価を得ることになった。
そして1999年にAMGはメルセデス・ベンツの一部門となり、2014年からはメルセデスAMGというスポーツブランドとしてプロダクションモデルそれぞれのトップエンドといえるハイパフォーマンスグレードや、SLS AMG、AMG GTといったスーパースポーツカーの開発を担っている。また同じ名前でF1を含めたメルセデスのモータースポーツ部門として活動していることは多くの人が御存知のとおりだ。
一方、BMW Mもモータースポーツのフィールドから生まれているが、異なっているのは1972年にBMWの子会社として誕生し、今も社内の一部門ではなく一企業として存在していること。1993年にBMW Mと名称は変わっているが、当初の車名がBMWモータースポーツだったことからも判るとおり、BMWがモータースポーツに参戦するためのマシン開発と製造、モータースポーツ関連の研究開発などを行う目的で設立され、翌年にはヨーロッパF2選手権やヨーロッパ・ツーリングカー選手権でタイトルを獲得している。
BMWファンの中では伝説的存在といえる3.0CSLや3.5CSLも、BMWモータースポーツの研究開発から生まれたマシンだ。
またBMWのモータースポーツ活動を支える存在であり続けるのと並行して、次第に市販モデルの開発にも関わるようにもなり、1978年に正式デビューとなったBMW初のスーパーカーといわれるM1も、BMWモータースポーツの企画開発によって誕生したモデル。
そしていうまでもなく1985年に発表されたE30型M3こと初代M3のようなレースのためのホモロゲーションモデル、BMW各シリーズのハイパフォーマンス版である“M”モデル、もう少しライトなスポーツグレードである“Mパフォーマンス”モデル、“Mスポーツ”と名づけられたスポーツパーツが組み込まれたモデルやパーツそのものも、代々一貫してBMW Mが開発に大きく関与している。
もちろんメーカーと一枚岩になって市販車の開発を進めているわけだが、Mモデルの開発プロセスにおけるタイヤをはじめとするパーツサプライヤーへの性能的な要求は、BMWの通常のモデルとは比較にならないくらい高く厳しいものだという。