ボディサイズ感や車内空間は先代の方が良い面も……
新型ホンダ・ヴェゼルが絶好調だ。予約受注から2カ月で約3万台の受注があり、最上級のPLaYグレードともなれば、納期は来年というぐらいである(半導体不足も影響しているはずだが)。ここでは、そんな新型ヴェゼルを先代モデルと徹底比較してみたい。新型がすべて良くなっている……はずだが、じつは、先代オーナーにとってちょっとがっかり!? な部分がないでもないのである。
1)スタイリング
まずはスタイリングだが、新型は2ランク上級になった印象だ。水平基調のサイドライン、低全高で、初代ヴェゼルから目指しているクーペシルエットのクロスオーバーSUVらしさが増幅。欧州プレミアムSUVに負けない存在感を示している。
ボディサイズは全長4330×全幅1790×全高1590mm。先代が全長4295×全幅1770×全高1605mmだったから、全長、全幅ともに拡大し、逆に全高は15mm低くなっている。なお、ホイールベース2610mmは変わらない。ところで、すでに自宅の駐車場や様々な駐車スペースに止めた経験から言わせてもらうと、先代のコンパクトクロスオーバーSUVらしさはやや後退。1790mmの全幅は今では特別幅広くはないのだが、先代の車幅に慣れていると、狭い場所では幅広さを感じることになる。たかが20mmではあるのだが……。
2)走破性
SUVとして気になる走破性については、新型が圧倒すると考えていい。クロスオーバータイプのSUVのHVモデルでは、リヤモーターだけで後輪を駆動するモデルがほとんどだが、新型ヴェゼルのe:HEV、リアルタイムAWDはなんと、センタータンクレイアウトの恩恵もあって、後席ほぼフラットフロアの実現と同時に、後輪にプロペラシャフトを介して大トルクをダイレクトにつなぐ構造を新採用。結果、140km/hまで対応するAWD性能が飛躍的に向上している。
最低地上高は先代の2WD:185mm、AWD:170mmから、新型は2WD:185-195mm、AWD:170-180mmとなった。新型の最低地上高に2種類の数値があるのは、16/18インチのタイヤサイズのうち、後者は18インチタイヤ装着車となり、最低地上高にさらなる余裕がもたらされているのだ。なお、最小回転半径5.3~5.5mは先代(16/17インチタイヤ)と変わらない。
3)インテリア
インテリアに目を向けると、新型は前後席の頭上のほとんどの面積がガラス張りとなるパノラマルーフを用意。これは先代モデルに望めなかった装備、室内の解放感貢献のキモになる。後席足もとの広さにしても、身長172cmの筆者のドライビングポジション背後に着座すれば、先代比+35mmもの、約290mmもの膝まわり空間が確保されているのだから、くつろぎ感は大きく進化していると言っていい。
シートサイズはと言えば、運転席の場合、先代はシートクッション長490mm、クッション幅500mm、シートバック高610mmから、新型は同520mm、510mm、640mmにまで拡大。とくに背中を包み込むような着座感、かけ心地の良さでは先代モデルを圧倒する。
膝まわり空間が広がった後席は、先代がシートクッション長490mm、クッション幅1250mm、シートバック高630mmから、新型は同490mm、1260mm、620mmとほとんど変わっていない。しかし、フロアからシートクッション前端までの高さ=ヒール段差は、先代の355mmから340mmに低まっている。これは全高、室内高(1265mmから1225~1240mm)が影響しているはずで、自然な着座姿勢、立ち上がり性という点では先代のほうが有利と見ていい部分なのである。
ただし、である。先代ユーザーのお気に入りポイントのひとつでもあったはずの、スーパーカーやエキゾチックカーのセンターコンソールを思わせた、ハイデッキコンソール、その下のフロントコンソールポケットやハイデッキコンソール後端にあるマルチユーティリティドリンクホルダーの使い勝手など、デザインの良さだけではない使い勝手の遊び心!? はもはやなし。上級グレードにあったインパネまわりの上級感あるスウェード調の張り物もなしだ。
さらに言えば、ルーフを低めたおかげで、スタイリッシュさは増したものの、室内高もまた低くなり、身長172cmの筆者が運転席に着座すると、頭上スペースは先代の190mmから、新型は170mm、後席でも、先代の125mmから115mmに減少。天井が迫る……ほどではないが、頭上方向の広さ感ではやや後退していると言っていい。