人気のハイブリットカーとは? 魅力やメリット・デメリットについて (1/2ページ)
クルマの電動化が加速するなかハイブリッドはますます主役に
日本が得意とする自動車のパワートレインがハイブリッドだ。現在では多くのメーカーが何らかのハイブリッドユニットを用いており、多くの車種に展開している。今回はハイブリッドカーの魅力やメリット、デメリットについて見ていきたい。
■ハイブリットカーとは?
‐ そもそも「ハイブリット」とは
ハイブリッドカーとは、2つ以上の動力源を組み合わせて走るクルマを指し、一般的にはエンジンとモーター使用している。それぞれが苦手な部分を補い合い、得意な部分でクルマを動かすことで、走行性能をアップしたり、環境性能(燃費)を向上することができる。当然いま世の中で使われるようになった電動車の一種である。
‐ ハイブリットカーの特徴
ハイブリッドカーは、前述のとおり従来のクルマのエンジンに加えてモーターを搭載している。じつはハイブリッドと一口に言ってもさまざまなシステムが存在していて、エンジンやモーターの役割も異なってくる。
そのなかでも共通した1番の特徴は回生ブレーキである。従来のクルマに付いている油圧ブレーキはクルマの運動エネルギーを熱に変換して空気中に放出することで減速している。回生ブレーキはこの熱として捨てているエネルギーを電力に変換して溜め、動力として活用するというものだ。極々簡単にいえば減速時に発電機を回すことで、その回す負荷を減速に使うことになる。加速時にはその電力でモーターを回すことで、燃費を向上したり、より強い加速力を得ることができるのだ。
‐ ハイブリットカーの仕組み
ハイブリッドカーには細かくいえば色々な種類があり、同一のメーカーでも複数のシステムを持っていることもある。
そのなかでも大別すると、「ストロングハイブリッド」と「マイルドハイブリッド」が存在し、さらに「パラレル方式」「シリーズ方式」とわかれる。
まず一般的に、ストロングハイブリッドは大きめのモーターと容量の大きなバッテリーをもち、エンジンを使わずバッテリーの電力によってモーターのみで駆動するEVモードをもつものとなる。
マイルドハイブリッドは範囲が広く、基本的には加速時はエンジンが常に駆動しており、それをモーターがプラスの力としてアシストするシステムとなり、モーターのみの走行はないに等しい。また、通常の純エンジン車であっても、補機バッテリーに充電するための発電機を持つが、これを減速時のみ接続して加速時の負荷を減らし、減速エネルギーを回収する、モーターがアシストしない回生ブレーキのみをもつクルマもマイルドハイブリッドと呼ぶことがある。
パラレル方式は、エンジンとモーターがそれぞれ動力としてクルマを直接駆動するもので、エンジンのみ、モーターのみ、エンジン+モーターという3つの走行パターンをもつクルマがほとんどだ。
シリーズ方式は、基本的にモーターで走行し、エンジンは電力を生み出す発電機として機能するシステムを指す。ただしメーカーによっては、一部の低負荷領域のみエンジンを直接駆動の動力として使う仕組みを採用しているケースもある。
■ハイブリットカーのメリット
①燃費が良い
ハイブリッドカーの特徴はなんといっても燃費性能に優れることだ。前述したとおり、これまでの純エンジン車で熱として捨てていた減速エネルギーを溜め、動力として使用するのだから当然といえるだろう。しかもエンジンは始動時や発進などの際に大きな負荷がかかり、すなわち燃料を多く消費する。モーターは回り出す瞬間から大トルクを発生するため、エンジンの苦手な発進領域をモーター駆動とする、もしくはアシストするために、燃費向上が可能となるのだ。とくにストロングハイブリッドでは、大幅な燃費アップが望める。
②環境に優しい
前述のとおり燃費がいいということは、ガソリンなどの化石燃料を使わないということになる。すなわち走行中に出す、NOx(窒素化合物)やCO2(二酸化炭素)など、大気汚染や地球温暖化に繋がる排出ガスが少ないのだ。それゆえに環境に優しいということができる。
また、ストロングハイブリッドの場合は、モーターのみで走行してエンジンを始動しないEVモードが設けられているクルマが多く、人口が密集している都市部でEV走行を使うことで、人間への排ガスの影響を減らすことも期待できる。
さらにモーター発進ができるハイブリッドカーの場合、低速域や発進してしばらくはEVモードに入ることが多く、つまり停車中は基本的に完全なアイドリングストップ状態になる。その点でも環境に優しいといえるだろう。
③ランニングコストが安い
ハイブリッド車は燃費がいいため、単純にガソリン代(軽油代)が安く済む。つまりそれだけで走行距離に対するランニングコストが安く押さえられる。
また、回生ブレーキがあるため、いわゆる油圧ブレーキに対する負荷が小さく、それ故にブレーキパッドやドラムシュー、ローターなどの摩耗も少ない。ガソリン車に比べて交換時期が長くなるため、経済面で助かることになる。
④静粛性が高い
ストロングハイブリッド限定とはなるが、まず早朝出発や深夜帰宅などの際、近隣に住宅がある場合は、EV走行を使うことで、エンジン音で迷惑をかけることなく移動することができる。
さらに通常走行時でも、モーターとエンジンを併用するため、よほどの高負荷でない限り、エンジンが高回転まで回ることがない。それゆえにパワーユニットからの音が小さく、車内の静粛性が保たれて会話がしやすいなど、快適な移動空間となる車種が多い。
⑤航続距離が長い
燃費が良好ということは、燃料を満タンにしてからの航続距離が長いということに繋がる。車種によっては1000km以上を走行できるものもあり、旅先でガソリンスタンドを探す手間が省けたり、給油に時間を取られないで済むなど、ストレスフリーな運用が可能となる。最近では全国でガソリンスタンドが減少していることもあり、長距離移動をすることが多いひとには大きなメリットとなるであろう。
■ハイブリットカーのデメリット
①価格が高い
かつてはハイブリッド専用車が主であったハイブリッドカーだが、いまは多くの車種に、グレードとして設定されることが多い。そこで比較するとわかるのだが、ほぼ同じ装備のグレードで見ると、純エンジン車よりもハイブリッドのほうが価格が上となっている。
当然といえば当然なのだが、ハイブリッド車はエンジンを搭載した上で、さらにパワーコントロールユニット、バッテリー、モーターなどが追加されているので、単純にパーツだけをみても高くなる。
ではどのぐらい差があるのか、いくつか例をみてみたい。すべて税込価格だ。
●トヨタ・ヤリス
G 1.5L CVT 2WD :175万6000円
HYBRID G 1.5L 2WD:213万円
差額 :37万4000円
●ホンダ・フィット
HOME 2WD :171万8200円
e:HEV HOME 2WD:206万8000円
差額 :34万9800円
●日産セレナ
G 2WD :306万1300円
e-POWER G 2WD:347万3800円
差額 :41万2500円
このように、同一車種の装備が同等のグレードで比べると、30〜40万円程度の差になる。結構な差だということができるだろう。ただし車種にもよるものの、クルマを乗り替えるときの下取りや買い取り価格は、同じ車種ならハイブリッドのほうが有利になることが多い。初期投資は大きいものの、乗りつぶし派でなければ差額がそのままコスト差となるわけではないことも憶えておきたい。
②ブレーキの違和感
最近のモデルでは良くなってきているものの、ハイブリッド車のブレーキは「板を踏むようだ」とか「スイッチ感がある」など、純粋なエンジン車に比べて感触、コントロール性が今ひとつであると言われることが多い。
これは、減速エネルギーを電力に変換する回生ブレーキと、通常のエンジン車に用いられている油圧ブレーキの両方を利用するためだ。
この2つのブレーキの協調制御が非常に難しく、油圧ブレーキのみのクルマに対してフィーリングが悪いと言われる。ただし代を追うごとに改善されているポイントだ。
③重量が重くなる
ハイブリッド車はエンジンに加えて、電動のモーターを動力として利用する。それゆえ、純粋なエンジン車に対して、モーター、さらにはそこに電力を供給するバッテリー、システム全体を制御するパワーコントロールユニットなどが付加される。
とくに、モーターメインで駆動するシリーズハイブリッドや、パラレルハイブリッドでもモーターのみで走行できるモードをもつストロングハイブリッドは、バッテリー容量も大きく、重くなりがちだ。
例を挙げて比較してみよう。
●トヨタ・ヤリス HYBRIDZ 2WD:1090kg
●トヨタ・ヤリス Z 2WD :1020kg
●ホンダ・フィット e:HEV HOME 2WD:1180kg
●ホンダ・フィット HOME 2WD :1090kg
このようにガソリン車とハイブリッドでは同じようなグレードで比較してもかなり重量が異なる。
基本的にはクルマは軽いほうがいい。重量に左右される主なポイントは、燃費、加速、減速、コーナリングといったところだ。ハイブリッドゆえに燃費は無視できるとしても、走りの軽快さという点でハイブリッドが不利になることは間違いない。
④バッテリーの寿命
前述したとおり、ハイブリッド車は駆動用バッテリーを搭載する。電気自動車に比べてあまり目立たないが、長く使用しているとバッテリーのパフォーマンスは落ち、最終的に寿命を迎えることもある。機械部品で構成されるエンジンに対し、バッテリーは一部の部品交換などで対応できるわけではなく、乗り続けるためには交換するしかないのだ。
たとえば気に入ったクルマで何十年も乗りたい、といった場合、ハイブリッドは難しいという側面があることも憶えておきたい。