かつては純正でクーラーを付けると高額だった
毎年、酷暑ということもあるが、いずれにしても夏にエアコンがないというのは信じられないだろう。実際、なしで乗った日には背中はシートで蒸れたりして、全身ベタベタ。頭は暑さでクラクラしてくるのは確実で、熱中症も頻発だ。
しかし、エアコンがすべてのクルマに標準装備はここ30年ぐらいのこと。1980年代でもエアコンのないグレードもあって、オプションで選んだりした。問題はそれ以前で1970年代まで。正確には冷風と温風を自在にコントロールするエアコンではなく、ただ冷気が出てくるクーラーのほうが多かったが、いずれにしてもクーラーでも付いていれば快適ではあった。
ただ、純正でクーラーを付けると高額になるため、後付けのキットもあって、助手席の足もと、グローブボックスの下に吊り下げるタイプを装着しているクルマも多かった。ブランドもサンデンのレザムなどがあったし、「冷房車」というステッカーを貼って誇らしげにアピールしたものだ。
では、付けていないクルマはどうしたか? もちろんなければ非常に暑い。まずシンプルなのがうちわを常備。冗談ではなく、真面目な話しで、サンバイザーのところに挟んであって、信号で止まるとパタパタと仰いでいるクルマをけっこう見かけたものだ。さらにシガーソケットから電源を取る扇風機も人気で、車内のドレスアップも兼ねてBピラーに付けたりしていた。
純正装備として、効果があったのが三角窓で、少し開けるのではなく、反対側に裏返しになるように開けると走行風がドンドンと入ってきて、これがかなり涼しかった。もちろん走らないと風は入ってこなくて、渋滞にはまると日干し状態にはなったが、構造上仕方がない。ちなみに三角窓を英語で言うと、ベンチレーションウインドウとなり、そのものズバリの意味だ。
そのほか、スバル360やマツダ・ポーターでお馴染みだったのが、本当のベンチレーターで、フロント部分に付いているフタを開けると三角窓と同じように、ドンドンと風が入ってきた。これと同じように、外気を積極的に取り入れる機能は当時のクルマにはけっこう付いていて、たとえばかの日産スカイライン(ハコスカ)にも、通称「パタパタ」と呼ばれるフラップが付いていて、ノブを引くと体や足もとに走行風が入るようになっていた。
こういった走行風でも十分涼しいと思っていたが、最近の酷暑とは別に、クーラーやエアコンの快適さを知ってしまうと、元にはもう戻れないというのが正直なところではある。