この記事をまとめると
■EVは走行時のCO2排出量はゼロだが製造時はガソリン車の数倍もCO2を排出する
■充電する電力を発電する際にも火力などではCO2を排出している
■それでもEV化が進むのは再生可能エネルギーへのシフトが見込まれる前提
製造時のCO2排出量はガソリン車よりもEVの方が多い
気候変動(地球温暖化)に対応するため、人間の活動による温室効果ガス(主にCO2)の排出量を減らそうと世界的なコンセンサスが生まれたのがパリ協定。それによって自動車業界的には電気自動車(BEV)や燃料電池車(FCV)といったZEV(ゼロエミッションビークル)へのシフトが待ったなしというムードになっています。そのトレンドは、新型コロナウイルスの大流行によって加速したという印象さえあります。
その理由はさまざまですが、新型コロナウイルスによって停滞した経済活動へのカンフル剤としてCO2削減に関するイノベーションへの投資を呼び込もうという各国政府の思惑もあるでしょう。イノベーション次第では競争力を大きく伸ばすこともできます。また、国や企業によってはそうしたゲームチェンジを歓迎しているという思いもあるでしょう。
とはいえ、クルマをすべてエンジン車からBEVに変えれば大幅にCO2排出量が減るというほど単純な話ではありません。たしかにBEVは走行中には排ガスを出しません。当然、CO2排出量もゼロとなります。しかし、発電時にはCO2が発生しています。なにより、製造時のCO2排出量についてはエンジン車に比べてBEVは倍近いCO2排出量になるという試算があります。
たとえば、マツダの研究者などが関わった論文のデータによると、製造時のCO2排出量はガソリンエンジン車に対して、BEVは2倍~2.5倍になるという試算があります。走行時のCO2排出量はガソリンエンジン車のほうが倍近くなるのですが、生産時の排出量を加味するとトータルではさほど変わらないという結果が出ています。むしろ発電のエネルギーミックス(どんな方法で発電しているのかを示す言葉)次第では、BEVのほうがトータルでのCO2排出量が多くなってしまうこともあるといいます。
同様の数字はフォルクスワーゲンも発表しています。こちらも製造段階でのCO2排出量はBEVのほうが倍近く、エネルギーミックスによってはエンジン車よりBEVのほうがCO2排出量は多くなってしまうと結論づけています。
もちろん、そうした事実は隠されているわけではなく、だれもが認識しているものです。では、CO2排出量を減らすためにBEVにシフトすべきといっている理由はあるのでしょうか。