ワンランク上のハンドリング性能をプラスした本格モデルだった
現在では残念ながら日本国内での乗用車の開発、生産を終了してしまったいすゞ自動車。しかし、乗用車事業撤退までにリリースされた車種には未だに多くのファンを魅了し続け、愛され続けている。
そんないすゞの乗用車に設定された「ハンドリング・バイ・ロータス」という仕様を覚えている人も多いのではないだろうか? 今回はそんなハンドリング・バイ・ロータスとはなんだったのかをもう一度振り返ってみたい。
日本で販売されたいすゞ車のなかで初めてハンドリング・バイ・ロータスが設定されたのは1988年2月に登場したジェミニZZハンドリング・バイ・ロータスであった。これはその名の通りハンドリングに関する足まわりのセッティングを英国のロータス社が手掛けたものであり、フロントに低圧ガス封入式ダンパー、リヤに高圧ガス封入式モノチューブダンパーをおごり、スプリングやスタビライザーの味付けも変更されるという本格的なもの。
もともと運動性能の高さに定評のあったジェミニに、さらにワンランク上のハンドリング性能をプラスしたモデルとして多くのファンを満足させるものとなっていたのである。
その後、1988年5月にピアッツァに、91年12月にはSUVである2代目ビッグホーンにもハンドリング・バイ・ロータスが設定されている(ちなみに初代ビッグホーンには89年11月に同じくロータスが足まわりをリセッティングした「スペシャルエディション・バイ・ロータス」が設定されていた)。
なお、いすゞとロータスがコラボレーションをしたきっかけのひとつとして、1986年にロータスが当時いすゞと資本関係にあったアメリカのゼネラルモーターズの100%子会社となったことが挙げられる。
そしてアメリカ市場では日本より先の1987年にインパルス(日本名ピアッツァ)のハンドリング・バイ・ロータスが設定されており、それが好評だったため日本にも逆輸入されたというのがじつのところなのである。
そんなロータスも現在では中国吉利汽車の傘下となっているが、2017年に登場したトヨタ・ヴィッツGRMNにはロータスチューンの1.8リッタースーパーチャージャーエンジンが搭載されていた。もっともこれはトヨタがロータスへこの2ZR-FE型エンジンを供給していたからという理由があるのだが、今後再びロータスがチューニングを手掛けた国産車が登場することはあるのだろうか?