運転免許証の「デジタル化」が現実的になるも「ドライバー」にとっての「メリット」は見当たらない!

住所変更や更新時の手続きにかかる時間の短縮などがメリット

 今年9月16日に発足した菅内閣は、行政のデジタル化を看板政策の一つに掲げ、「デジタル庁」の創設、そして運転免許証のデジタル化についても菅総理から強い指示があったとされ、警察庁は運転免許証のデジタル化について、運用開始時期を含む工程表を年内にまとめる方向で動いている。こうした運転免許証がデジタル化されると、我々ドライバーにとって、何かメリットはあるのだろうか?

 運転免許証がデジタル化されると、住所などの変更がオンラインで出来るようになったり、更新などの事務手続きの簡略化、スマホと一体化することで免許証の携帯が不要になったり、免許更新の時間短縮などの利点があるといわれている。

 だが、これらは本当にメリットといえるだろうか?

 政府が躍起になっているのは、まったく普及が進まないマイナンバーカードとデジタル運転免許証を紐付けし、マイナンバーカードの普及率を高めたいからとしか思えない。だが、マイナンバーカードが普及しないのは、政府が喧伝するマイナンバーカードを持つ利便性が感じられないためで、それはデジタル免許証と一体化されても変わらない。

 それどころか、個人情報の流出のリスクや、偽造免許証、なりすまし等の悪用などを考えると、ますますリスクが増えるだけだろう。日本年金機構の個人情報漏洩をはじめ、日本のデジタル情報の管理には、まだまだ不安な要素が多いからだ。

 そして、先の持続化給付金事業での電通への丸投げ、中抜きのように、メリットがあるのは、デジタル化を構築、管理、運用する組織だけで、全体としては膨大なコストがかかり、その負担は国民に回ってくるというという可能性は否めない。

 今年9月に、警察庁が優良運転者の免許証更新の時間を短縮するため、講習をオンライン化する方針を決めたという発表があったが、講習はオンラインでも視力検査など、その他の手続きは従来どおり試験場などに行く必要があるとのこと。

 免許証のデジタル化が進んでも、更新の手間暇は大して変わらない見通しだ。

 おまけに災害にあったあと、身分証明が必要な場面では、スマホが使えなかったり、アプリが起動しなかったり、電源が失われたりして、まったく役立たないということもあるわけで……。

 スマホを持っていない人や、マイナンバーカードの交付を望まない人もいるので、警察庁はデジタル化を進めても、従来の免許証の発行は継続する方向らしいが、少なくとも当面の間は、デジタル免許証のメリットは感じられそうもない。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

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