「骨盤が立った状態」があらゆる場面で重要だった
マツダがMAZDA3に採用した次世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE(スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー)」。これは「骨盤を立てる」「骨盤をキーにしてクルマをつくる」という発想から生まれた独自の技術だ。マツダはなぜこの骨盤に注目し、骨盤を立てるシートを目指したのか。
SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTUREの開発を担当した、マツダの操縦安定性能エンジニアである虫谷泰典氏によると、大きなきっかけは三つあったという。
ひとつは虫谷氏自身が操縦安定性の部署で働きながら、オフロードバイクのエンデューロレースを始め、先達から「骨盤を立てて乗らないと、バイクは操れない」とアドバイスをもらい、骨盤を意識してから、のちに全日本でクラス優勝を果たしたこと。
二つ目は、シニアサッカーの全国大会で膝を負傷し2ヶ月入院したときに、ドクターから「人の動きのすべては、歩行に集約される。骨盤が立っていないと、美しく歩けない」と教わったこと(虫谷氏は、もともとマツダサッカークラブ(現サンフレッチェ広島)にサッカー選手として入社)。
さらに退院後、社内の技術研究所で人間研究をしていた千葉氏からも、「骨盤が立った状態じゃないと、人はスムーズに動けない」という意見をもらって、骨盤を立てることを重視し、それを人間中心のクルマづくりの核に据えた開発に着手した。