オート化は想像以上に難しい!
以前であれば豪華装備だったものが、いつの間にか普及して、当たり前になっているという例はけっこうある。その代表格のひとつが、エアコンだろう。今では風量や温度だけでなく、風の向きも自動で調整してくれるフルオートエアコンが軽自動車にも付いているほど。スイッチを入れて温度だけ設定しておけば、あとはお任せなのはとてもラクだ。
しかし、実用車の廉価グレードや商用車では、マニュアルエアコンがまだまだ現役。装備的にはそれほど変わらない気がするため、すべてオートにしてしまえばいいのにと思うが、じつはそれほど簡単な話ではない。
やはりオートエアコンは価格が高い。もちろん、マニュアルもオートも同じで、設定温度に合った風を作ったら、それをファンで車内に送るという基本的な仕組みは同じ。ただ、マニュアルで行なっていることを自動にするとなると、複雑になってしまうのだ。
温度調整と風量調整はマニュアルであれば、手で回すだけなので内部もとてもアナログ。実際、ダイヤルを回すとグリグリとした感覚があり、外気と内気の切り替えもガコンと音がするほど。調整に合わせて冷風と温風を混ぜたり、モーターの速さが変わる。吹き出し口を切り替えるフラップは、手の動きに合わせて動くだけだ。
オートでは温度をモニターするセンサー、またそれに基づき、どのような状態に調整すればいいのかを判断するコンピュータも必要だ。もちろんフラップを動かすためにはいくつかのモーターを組み込まなくてはならない。
こう考えると、マニュアルとオートではコスト的に差が出ることがわかるだろう。逆に、そんなにコストがかかるなら、マニュアルでもいいやと思わなくもない。実際の操作もそれほど頻繁に行うこともないのでなおさらだ。
ただ、メーカーとしては商品の魅力づけという点で、オートエアコンを装備するというのは重要なこと。ライバルがやれば付けるしかないという事情もあり、今後もエアコンを含め、さまざまな装備のオート化が進んでいくだろう。