「手放し運転」に「車外からのリモート駐車」! 無敵にみえる日産アリアの「あえてのバツ」と素直に「凄いところ」 (1/2ページ)

航続距離は長くバッテリー管理の緻密!

 クルマの電動化に積極的な日産から、完全新設計のBEV(バッテリーEV)が登場する。その名は「ARIYA(アリア)」。日産は名前の由来について公式発表していないが、サンクスリット語の「アーリヤ」というのは「高貴な」という意味であり、これまで日産が展開していたBEVであるリーフとは一線を画す高級モデルになっていることを暗示している。

 実際、プラットフォーム、バッテリー、モーターと主要な構成要素はすべて一新されているというから、その仕上がりには期待が高まるところだ。思えば初代リーフが誕生したのは2010年。つまり10年分の経験がフィードバックされた結果がアリアのメカニズムに反映されていると考えられる。

 そこで、初代リーフ(後期型・30kWh仕様)のオーナーである筆者が、オーナー目線も交えて、新型BEVのメカニズム的トピックスについて進化を感じるポイントをピックアップ、マルバツ形式で紹介しよう。

 最大のマルといえるポイント、うらやましく感じるのはバッテリーだ。総電力量が65kWhと90kWhという2種類のバッテリーパックが設定されているという。現行リーフでもバッテリーは40kWhと62kWhの設定だから、アリアのバッテリーはそれぞれ1.5倍程度に多くなったといえる。初期型リーフ・オーナーの自分からするとアリアの上位グレードのバッテリー総電力量は3倍なのだから本当に驚くばかりだ。

 しかし、本当にうらやましいのは総電力量ではなく、温度管理が緻密になっていることだ。リーフのバッテリーは温度がパッシブで、言ってみれば成りゆき任せとなっている。そのため急速充電や高速走行といったバッテリーの温度が上がりやすいシチュエーションでは一気にバッテリー温度が上がってしまい、夏の盛りにはパフォーマンスが制限されてしまうこともある。また温度が低すぎてもダメで、冬場には急速充電での入りが悪く、同じ時間でも思ったほど充電量が回復しないこともある。新しいアリアのバッテリーは水冷システムを利用した温度管理をしているというから、そうしたネガを解決していると思われる。バッテリーを適温に維持するアリアでは、外気温に左右されず、また急速充電での温度上昇も気にしないBEVライフを送れそうで、本当にうらやましい限りだ。

 初代リーフには「プロパイロット」のようなADAS(先進運転支援システム)は搭載されていないので当然だが、「プロパイロット」を装備する現行リーフ・オーナーであってもアリアが採用する進化版「プロパイロット2.0」には羨望のまなざしとなること間違いなしだろう。2.0というくらいだからハンズオフ(手放し)運転ができるのは当然だが、ADASが用いるセンサーが7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーというから、スカイライン系のプロパイロット2.0よりも格段に進化していることが予想される。さらに準天頂衛星「みちびき」も活用することで、かなり高精度な制御を実現していることが予想される。

 登場のタイミング的に、レベル3自動運転のデモンストレーションを東京オリンピック・パラリンピックで展開していたはずだから、かなりレベル3自動運転に近いADASになっているであろうと期待も高まる内容だ。また、現行リーフには白線を検知して、かなりスムースに駐車を行なう「プロパイロット パーキング」が搭載されているが、アリアでは車外からの操作が可能な「プロパイロット リモート パーキング」が採用されているという。隣のクルマへのドアパンチを気にせず広い場所で降りてから駐車操作を行なえるというわけだ。

 そして、アリアには「ハローニッサン」と呼びかける音声認識機能とAmazon Alexaという2つの音声コントロールが搭載されているという。帰路でAlexaに話しかけ、家のエアコンや照明をつけておくといったシームレスな電脳生活ができるのは、最新のBEVだからこそ似合う。まさしく未来のライフスタイルが体験できるのである。

 以上、3点がリーフ・オーナーとして感じる最新BEV「アリア」のマルなところ。基本的にリーフで露呈したBEVのネガはきっちり解決しているので、不満はないがあえてバツなところを探すと、どんなポイントがあるだろうか。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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