フランスのメーカーながらスタッドレスは日本で徹底開発
昨年くらいから日本でもオールシーズンタイヤの人気が高まっているが、やはり冬の主役はスタッドレスタイヤだろう。ちなみに日本で初めて販売されたスタッドレスタイヤは、今から38年前の1982年に登場した「ミシュランXM-100」である。つまり、スタッドレスタイヤの技術開発という意味では、ミシュランはどのメーカーよりも歴史が長いということだ。
ちなみに皆さんのミシュランのスタッドレスタイヤに対するイメージはどうだろう? 多く聞かれるのが「ドライ性能がいい」、「都心部で使うにはピッタリ」だが、これは半分正解で半分不正解だ。
ミシュランのタイヤは、すべての性能を犠牲にしない「トータルパフォーマンス」の思想で開発されているが、それはスタッドレスタイヤでも同じである。つまり、もっとも重要な氷上性能だけでなく、すべての性能をバランス良く満足させているがゆえに、結果的にそのように感じてしまう……というわけだ。
続いて「ミシュランはフランスのメーカーだから日本の雪には合わないのでは?」だが、これは不正解。ミシュランは日本に開発拠点を持つ数少ない海外メーカーのひとつで、スタッドレスタイヤの基礎研究と開発は日本主導で行い、北海道でテストを行っている。その理由を聞くと、「日本の雪道は世界的に見ても特殊で厳しいので、ここで開発を行うのがベストという判断です」と語っている。つまり、日本の「道」と「雪」に合うタイヤなのである。
そんななか、ミシュランのスタッドレスタイヤの新作が発表された。従来モデルはX-ICE 3+だったので、筆者はX-ICE 4だろうと予想していたが、その名は「X-ICE SNOW(エックスアイス・スノー)」。恐らく、ミシュランのイメージを大きく変えようという決意表明なのだろう。
進化のポイントは、日本では最重要項目となる「アイス性能」と「雪性能」の向上だが、じつはこのふたつの性能、相反する部分があるのだが、トータルパフォーマンスのためには両立させる必要がある。そこでトレッドパターン/コンパウンド共に全面刷新されている。
コンパウンドは「EverWinterGripコンパウンド」を新採用。詳細は企業秘密ながら、「より大きく」、「不均一な形状」にすることにより、タイヤ表面に微小な凸凹を生成。これによりエッジ効果(雪を氷を引っ掻く)、アイスグリップ(水膜をやぶって接地する)、雪中せん断効果(溝が雪をつかみ踏み固める)が引き上げられている。また、剛性の高いポリマーベースの配合物の使用により、性能が長く続くのもポイントのひとつだろう。
トレッドパターンは効率よく雪や水を排出可能な「新世代Vシェイプトレッドパターン」を採用。コンパウンドと並んでスタッドレスの要となるトレッド部に刻まれる細かい溝(サイプ)は、新たに「VTSサイプ」、「NewクロスZサイプ」を採用。どちらも倒れ込みを防止することで剛性確保や接地面向上、エッジ効果の向上などにも大きく寄与している。