比肩なきデザインを成功させた理由とは? 開発者が明かしたマツダCX-30の秘密【大阪オートメッセ2020】

CX-30はデザインと室内空間の両立がテーマとなった!

 2020年2月14日(金)より16日(日)までインテックス大阪で開催された「第24回大阪オートメッセ2020」で、3号館にブースを構えたマツダ。そのメインステージではCX-30の純正アクセサリーパッケージ「シグネチャースタイル」が展示されるとともに、CX-30の開発を指揮した佐賀尚人主査と柳澤亮チーフデザイナーによる開発者トークショーが行われた。そのなかで明かされた、新たな開発秘話とは……?

 マツダ製SUVのルーツと言える「プロシードマービー」はトラックと同様のフレーム構造で作られていたが、それが「トリビュート」からはモノコック構造のボディとなり、初めて「CX」の名を冠した「CX-7」は都会でも似合うクロスオーバーデザインを採用し、乗り心地や使い勝手、走行性能も乗用車と遜色ないものに。そして初代「CX-5」がマツダ復興の契機となり、「CX-3」が数々のデザイン賞を受賞するなど、SUVが急激に進化した歴史を振り返った。

 そして直近のCX-30では、「お客様の人生や価値観に広がりを提供するクロスオーバー」が開発コンセプトとされ、「全然SUVっぽくないが、新しいファミリーカーとしてのポテンシャルを表現したい」(佐賀主査)という想いで開発したと述べている。

 また、CX-30と同クラスのSUVに対するユーザーの満足度を調査したところ、デザインへの満足度と室内空間への満足度が二律背反の関係にあったことに着目。CX-30ではデザインと室内空間の両立がテーマになったことを語り、内部資料である開発初期のパッケージング図面を公開した。

 これを見ると開発初期から、都心部に多い狭い道でのすれ違いや立体駐車場の要件を考慮して、全長×全幅×全高=4.4×1.8×1.55m以下にターゲットと定めつつ、室内空間をいかに確保するかにに注力していたことが窺える。

 その一方で柳澤デザイナーは「ちょっと短めで背が高いと縦横比がずんぐりしてしまうので、これをどうスタイリッシュにするか、非常に悩んだ」。だが、「クラッディング(ボディ下部の無塗装樹脂パネル)を太くすることで、ボディカラーの残ったところを薄くスリムに見せることで、伸びやかなプロポーションが作れる」こと、また「ルーフを後ろ上がりにすることで、くさび形の新しい動きを表現できる」ことに気付いたのが、ブレイクスルーになったという。

 それを踏まえてデザインのポジショニングマップを作成し、結果として「成熟した」「クーペライク」なデザインを突き詰める方向性が選ばれたことを、柳澤デザイナーは明かしている。なお、このポジショニングマップは、佐賀主査が「私もあまり見たことがない」というほど、貴重な内部資料なのだそうだ。

 また、マツダ3とCX-30は、映り込むものの変化によってサイドビューの陰影や色合いも揺らめいていく「移ろい」をデザインテーマの一つに掲げているが、これを量産車に落とし込むのは容易ではない。「クレイモデルをデータ化したものを生産部門に渡しただけでは、鋼板のプレス後にはスプリングバックが発生するため、この量産車の形にならない」(佐賀主査)のだという。

 そこで、金型を作る前に生産部門のエンジニアに集まってもらい、クレイモデルで造形の良さを実感してもらいながら、その造形を量産車で実現する方法を考える「『移ろい』の共創」を、マツダでは実施している。

 そして実際の生産現場では、この「移ろい」を実現するうえで、「ドアパネルを削る工程が非常に大事」(佐賀主査)になる。だが、「ミクロン単位で仕上げたいのに、削るたびに鉄粉が出ていたのでは仕上げられない。水を掛けながら削るわけにはいかない」。

 そこで、「砥石メーカーに悩みを打ち明けて、マツダ特注の砥石を作ってもらった」(同)。こうして出来たのが、鉄粉が砥石の表面に残らず中に入り込むよう無数の穴が開けられた「魂動砥石」なのだという。

 このように、様々な匠の技が盛り込まれて出来上がったCX-30は、「オートカラーアヲード2019」グランプリに加え、ドイツの「ゴールデンステアリングホイール賞」も受賞。後者のトロフィーを来場者に披露し、40分にわたる開発秘話盛りだくさんのトークショーを締めくくった。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
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