理論上は速度を出せば天井に張り付いて走行できる!
燃料、冷却水、油圧系、潤滑系などに細かい問題があるかもしれないが、そうしたことを抜きにすれば理論的には十分可能。F1マシンの車重は、およそ640㎏(ドライバー込み)。要はそれ以上のダウンフォースが発生すれば、天井にはりついて走ることができる。
それでは、F1マシンのダウンフォースは、どれほどあるのか。
2009年のレギュレーションの改定時に『ダウンフォース量の半分に抑えるため、12,500ニュートン(約1,275kg)のダウンフォース量を超えてはならない』という一文があったので、削減されたとはいえ、車重の倍近くのダウンフォースがかかっているのは確実。
もっとも、ダウンフォースは、速度の二乗に比例して増減すると言われているので、大雑把に言うと200km/hの走行時は、100km/hのときの4倍のダウンフォースが発生し、速度が半分になると、ダウンフォースは1/4になってしまう……。
では、どのぐらいの速度を出していれば、F1マシンは逆さになって走れるのか? 元ジョーダンF1チームのエンジニアだった、ゲイリー・アンダーソンは、この質問に「理論的には、おそらく時速約120マイル(193km)でトンネルの天井を上下さかさまで走行できる」と答えている。
というわけで、加速しながら、逆さになれるコークスクリュー状の特殊なコースがあれば、F1マシンは200km/h以上の速度で、逆さになって走ることができるだろう。
余談だが、空力的にはF1以上の怪物マシンだった、全盛期のグループCのレーシングカーなどは、最大で3.5tものダウンフォースを発生していた!
飛行機は空気の力で空を飛び、レーシングカーは空気の力で地面にはりつく。見えないけれど大きな力であるエアロダイナミクスは、今後、市販車の世界でもますます重要度を増していく分野のひとつだろう。
※シミュレーション動画