ランエボとインプの「穴」の役割は異なる
三菱のランエボ(ランサー・エボリューション)やスバル車(インプレッサ・WRX)など高性能を標榜するモデルの多くにはボンネットフードに穴が開けられている場合が多い。最新モデルの日産GT-Rニスモ2020モデルではボンネットフードの穴に加え、フロントフェンダーにも穴が開けられた。これらの「穴」が意味するのは一体何なのかを解説しよう。
一言に穴と表現しても実際にはその形状はさまざまだ。そしてその役割も形状や設置場所によって異なっている。大きくわけると「空気を入れる穴」と「空気を出す穴」に区分できる。前出ランエボとスバル車で見るとランエボは空気を出す穴で、この場合は「エアアウトレット」と表現する。一方、スバル車の場合は「空気を取り入れる穴」で「エアインレット」と表現されるものだ。
エンジンフードから空気を出すエアアウトレットは、エンジンの発熱により高温となったエンジンルームの熱気を逃がす役割と、エンジンルーム内の空気を排出してエンジンルーム内の気圧を下げ冷却用空気をフロントラジエターグリルから効率よく取り込めるようにするのが狙いといえる。スバル車の場合は、エンジンの真上に過給器による圧縮吸気エアを冷却する目的の空冷インタークーラーが設置されていて、これに直接外気を冷却風として当てるためにエンジンフードにエアインテークを設けて冷却空気を取り込んでいるわけだ。
高速で走行している場合、エンジンルーム内はフロントラジエターを通過して流れ込む冷却エアとエンジンの発熱による気体の膨張で高圧となっている。そこに外気を取り込むには強力な外気圧が必要となるためスバル車のエアインテークはエンジンフード後端上方へと張り出させているのがわかる。だが前方と上方から取り入れられる空気の排出口が無いので高速で走行しているスバル車をみるとエンジンルーム内が高圧となって車体前方が浮き上がって見える。
だが市販車の場合、ことはそれほど単純ではない。一つはボンネットフードに穴を開けることでボンネットフードの剛性不足が生じ、補強をしなければならない。その結果ボンネットフードが重くなり運動性能に悪影響を与えてしまう。
またボンネットフードに補強を加えることでボンネットの変形が抑制され、歩行者が衝突した場合などに頭部損傷のリスクが高まってしまう。さらに雨などがエンジンルームにダイレクトに進入してしまうためエンジンや補機類の腐食など耐久性面にも問題が生じ易くなってしまうのだ。
冬季など外気温度が低い時はエンジンルームから排出された高温の空気がフロントガラスに当たり、ガラスを曇らせて視界を遮ってしまうこともある。そのためにさまざまな対策が必要になってくる。