当たり前の存在となったハイブリッドカーの先駆者
トヨタという自動車メーカーは「石橋を叩いても渡らない」など、保守的なイメージが強い人も多いかもしれない。しかし世界初、日本初といった技術も少なくない。これまでトヨタが世に送り出してきた技術を振り返ってみよう。
1)ハイブリッドカー
今では当たり前のものとなったハイブリッドカーは、トヨタが1997年登場の初代プリウスで実用化した技術である。1.5リッターガソリンエンジンを積む当時のカローラの2倍の燃費を目標に開発された初代プリウスは、現代のトヨタのハイブリッドカーにも通じる駆動用と発電用のモーターを持つ2モーターハイブリッドを搭載。当時未知のものだったハイブリッドシステムの開発は、フィーリングや信頼性、耐久性の確保などに加え、かなりの短期間で行われたものだったこともあり、困難の連続だったという。実際発売後のトラブルも少なくなかったようだ。
しかし初期モデルのトラブルに対しては、特別なサービス体制やバッテリーを永久保証にするなど、顧客満足度を第一に考えるトヨタらしい対応で乗り越え、信頼も得た。ただ当時はガソリン価格が安かったこともあり初代プリウスはそれほど売れず、収益が良くなかったのも事実だった。
だが「ハイブリッドは将来基幹技術となる」と判断したトヨタは初代プリウス以降エスティマやハリアーなど、ハイブリッドカーのラインアップを徐々に拡充。さらに2003年登場の2代目プリウスのモデルサイクル後半にはガソリン価格の高騰も追い風になり、プリウスは徐々に人気車に成長した。
そして2009年登場の3代目プリウスではリーマンショック直後の不景気を敏感に察知し、205万円からという激安価格としたこともあり爆発的にヒット。以降ハイブリッドは多くのトヨタ車にラインアップされるようになり、他社も含め日本車では当たり前の存在となった。
2)燃料電池車
燃料電池車は、水素と酸素の化学反応でできた電気で走る。そのため排出されるのは水だけということもあり、究極のエコカーと呼ばれる存在だ。その反面水素タンクなど超高レベルの強度や精度が求められるため、コストの高さやインフラ整備など、実用化のハードルも非常に高いのも事実ながら、トヨタは2014年にMIRAIで実用化。しかも価格は700万円台(国からの補助金も約200万円!)と現実的な範囲かつ、内容や生産台数などを考えれば激安なこともあり、世界中の自動車メーカーを震撼させた。
現行MIRAIがまだメジャーな存在でないのは否めない。しかし東京モーターショーに出展され来年末に市販化される次期MIRAIは、エコカーという前にエモーショナルな魅力あるクルマとして選んでもらえる存在を目指し開発されているとのことで、燃料電池車普及の牽引車として大きな期待が掛かる。