世界は右側通行が主流かと思いきや3割も左側通行がある
日本のモータリゼーションが活発になったのは1950年代からですが、戦後まもなく左側通行が道路交通法によって規定されています。ほとんど自家用車などなかった時代、当時はアメリカに統治されていた沖縄ではアメリカ本土と同じ右側通行(左ハンドル)になっており、いわゆる沖縄返還によって右側通行から左側通行に移行したという経緯があります。
さて、日本が左側通行を採用した理由として、様々な理由があげられますが、基本的に歩行者のルールと自動車のルールは異なるため、やはりモータリゼーションの進化の過程で左側通行になったと考えるのが妥当でしょう。
その中でポイントとなるのは路面電車の普及といわれています。現在では限られた都市でしか見ることのなくなった路面電車は道路の中央付近を走りますが、その両側を自動車が走行するため、進行方向に対して、どちら側を走るかを決めておかなければ危険。
その際に、イギリスを参考にしたので左側通行になったという説もあります。そして、1923年の関東大震災によって路面電車のレールが被害を受けた影響で、道路さえあれば走ることのできる乗り合いバスが普及しはじめます。この際に、左側通行に合わせて車両の左側に乗降口を設けたことが、戦後にリセットする可能性がありながら左側通行を続けることになった理由のひとつになったともいわれます。
また、日本の左側通行がイギリスの影響を受けたように、世界中でもかつてイギリスの植民地だった地域を中心に、左側通行を採用している国や地域は少なくありません。イギリスはもちろん、オーストラリア、インド、マレーシア、タイ、シンガポール、ケニア、南アフリカなどなど、世界的にみると3割程度は左側通行を採用しています。
仮に日本のような左側通行の地域において右側通行に変えるためには、バス停、信号の位置、停止線からインターチェンジにいたるまでインフラを一気に変えないといけない上に、正面衝突事故の発生も予想され、非現実的といえるでしょう。
ちなみに、左側通行圏では右ハンドル、右側通行圏では左ハンドルが主流となっているのはクルマ同士のすれ違いの際に有利であることや、助手席の乗員が安全に乗降できることを考慮したといわれています。しかし、19世紀に作られた初期の自動車は右側通行圏のドイツなどでも右ハンドルとなっていました。これは、当時の整備されていなかった道路においては路肩に注意すべきだったためであるとか、馬車の名残であるといった説があります。
おもしろいところでは、WEC(世界耐久選手権)の専用マシンではピットロードの位置関係からドライバー交代が安全かつスムースに行なえるように右ハンドルを選択するケースも見られます。