修理キットは使えないことも多いので要注意
2016年4月のJAFの出動回数のデータを見ると、タイヤのパンクは1ヶ月で28,465件。1位のバッテリー上がりに次ぐ救助要請になっている。それだけトラブルの頻度が多いタイヤのパンクだが、もしタイヤがパンクしてしまったらどうするか。
従来はスペアタイヤに交換するのが定番だったが、最近はスペアタイヤを積まずに、「タイヤパンク応急修理キット」を標準装備しているクルマも多い。
「タイヤパンク応急修理キット」は、補修剤とコンプレッサーの組み合わせで、ジャッキアップやタイヤの脱着が不要。補修剤(シール剤)をタイヤエアバルブから封入し、コンプレッサーで空気を入れれば、応急処置OKというのが特徴である。
スペアタイヤよりコンパクトで、場所をとらず、重量も軽くできるので、燃費やその他を考慮して、スペアタイヤを排して、応急パンク修理キットを標準化しているメーカーが多い。
ただし、応急パンク修理キットは下記の条件では使えないので要注意。
・タイヤ空気圧が不十分な状態で走行してタイヤが損傷しているとき
・タイヤ側面など道路への接地面以外に穴や損傷があるとき
・タイヤがホイールから明らかに外れているとき
・タイヤに4mm以上の切り傷や刺し傷があるとき
・ホイールが破損しているとき
・2本以上のタイヤがパンクしているとき
・1本のタイヤに2か所以上の切り傷や刺し傷があるとき
・補修液の有効期限が切れているとき
こうして見ると、意外に使用できないケースが多い! とくに補修液の有効期限などは気にしていない人がほとんどだろう……。
さらに問題なのは、応急パンク修理キットは、あくまで「応急」用だということ。
メーカーの取説を見ても、「タイヤパンク修理キットによる応急修理は一時的な処置です。できるだけ早くタイヤを修理・交換してください」、「応急修理後は、80km/h以内で走行し、最寄の整備工場へ」、「タイヤパンク応急修理キットで応急修理をしたタイヤは、新しいタイヤに交換することをおすすめします」と書いてある。
つまり結局、本格的なパンク修理が必要で、しかも一度応急パンク修理キットを使うと、タイヤの再利用が出来ない場合も……。
一方、スペアタイヤ(テンパータイヤ)はどうかというと、まず交換作業に手間がかかる。夜や雨、雪、平らでない場所、交通量の多い場所での交換はかなりリスクを伴う……。交換後は、80km/h以下、走行距離は100kmまで。空気圧も時々チェックしておかないといざというとき使えないなどの問題もあるが、標準タイヤがバーストしても、窮地をしのげるというのは大きな強み。
応急パンク修理キットが標準になっているクルマに、スペアタイヤを積んで置け、というのは現実的ではないが、どちらか選べるなら、スペアタイヤの方が安心だ。
では、応急パンク修理キットが標準搭載されているクルマがパンクしたらどうするか。できれば応急パンク修理キットを使わずに、JAFなどを呼んでタイヤ屋さんまでレッカーしてもらうのが一番得策だと思う(補修剤を使うと、もうそのタイヤを再利用できなくなる可能性があり、再利用する場合も、補修剤の洗浄等にコストがかかるし、新品の補修剤も購入しなければならなくなるから)。
同じ理由で、スペアタイヤが標準なのに、それを降ろして、代わりに応急パンク修理キットを積んで置くのは、すすめられない。タイヤ云々だけの話でなく、追突事故に遭った際、スペアタイヤも立派な剛性パーツとして機能してくれる可能性があるからだ。