エンジンの力を有効に路面に伝えるには4WDが適している
僕はといえば言わずと知れた4WD推奨派だ。ランサーエボリューション(通称ランエボ)はもとより遡れば三菱GTOも、R32からR34までの日産スカイラインGT-Rも4WDだからこそ存在価値があったはずだ。近年、スポーツモデルの馬力はますます高まる傾向にあり500馬力オーバーはもはや常識レベル。中には1000馬力以上、2000馬力モデルも企画されているというから驚く。
これほどの馬力を有効に路面に伝えるには4WDは不可避であり、4WDでもトラクションキャパシティは足りなくなっていて電子制御のトラクションコントロール(TC)に頼らざるをえない状況といえる。
では日本ではもっとも販売台数の多い軽自動車はどうなのか。スーパートールボディやトールワゴンが大人気で軽自動車販売の大多数を占めるなか、スズキのジムニーやハスラー、少し前なら三菱のパジェロ・ミニなどクロカン系SUVの軽も人気で4WDモデルは存在しているが、ことスポーツモデルとなると4WDモデルは皆無の状況だ。
現在軽のスポーツモデルと言えばホンダのS660やダイハツのコペンくらい。S660はミッドシップにエンジンを搭載し後輪を駆動するMRレイアウト。コペンはフロントエンジンの前輪駆動だ。どちらも2シーターオープンということでは共通しているが4WDはバリエーションに設定されていない。
軽スポーツが盛んだったのは1970年~1990年代。1970年に登場したホンダZ(俗称・水中メガネ)が先鞭をつけた。360ccの空冷エンジンを搭載し前輪を駆動するFFレイアウトモデルで人気を博したが1974年で生産を終了。
1998年に2代目が登場するが、こちらは660ccの企画になり水冷エンジンをミドシップに搭載して4輪を駆動する4WDメカニズムが採用されたが、スポーツカーではなく車高の高いSUVカテゴリーとして生まれ変わっていた。そして2002年には生産終了してしまう。
1971年~1976年まで生産されたスズキ・フロンテクーペも軽スポーツとして素晴らしい性能を披露していたが、リヤエンジンの後輪駆動というRRレイアウトだった。この後にはスズキ・カプチーノやマツダ・AZ-1など軽スポーツは登場しているが4WDスポーツといえるようなモデルは存在した例がない。その理由はどうしてだろうか。