上り下りを間違える? 前のクルマが蒸発?? 運転中誰にでも起こる錯覚5つと対処法 (1/2ページ)

かなり前から見えているクルマとの衝突事故も錯覚で起こっている

1)勾配が逆転する錯覚

 2019年4月の航空自衛隊三沢基地のF-35A戦闘機の墜落事故は、パイロットの平衡感覚喪失が原因だった疑いが強いと発表されている。

 平衡感覚喪失=バーティゴというのは、「自らの平衡がわからなくなる状態」のことで、その「バーティゴに入る」のは、ベテランパイロットでも避けられないといわれている。

 これは一種の錯覚で、クルマを運転しているときも、同じように水平感覚が狂って、上り坂だと思っていた道が、じつは下り坂でスピードがどんどん加速していったり、下り坂だと思ったところが上り坂で、アクセルを一定にしていたら速度がダウンする、といったことは起こり得るし、実際に経験したことがある人も多いはず。

  

 どういうシチュエーションでこうした錯覚が起こるか。

 下り坂の途中でその勾配がゆるくなったりすると、視覚的にはそこから上り坂になっているように見え、反対に上り坂の途中で勾配がゆるくなると、そこがゆるい下り坂に見えたりする。人間の平衡感覚は主に視覚に頼っているので、ときとしてこういう錯覚が生じるのだ。

 こういう主観と客観の勾配が逆転するような道では、自分の感覚ではなく、スピードメーターを信じて、速度調整することが重要だ。

2)コリジョンコース現象

 田舎の田んぼ道などかなり見通しのいい交差点であるにもかかわらず、直交するクルマ同士が互いのクルマの存在に気が付かないまま衝突する、何ともおかしな事故が時々起る。

 これは、直交するクルマが自車と同じ速度で走っているときに起きやすく、コリジョンコース現象と呼ばれているもの。

 人間の視野には中心視野と周辺視野があり、正面からだいたい35度以上の視野は周辺視野で捉えていて、周辺視野にあるもので、動いていないものは認知しづらいという特性がある。

 自分が交差点から500m手前のところにいるときに、直交する道の右方向の交差点から500mの位置に別のクルマが交差点に向かって走っているとき、そのクルマは自分から見て、右45度の位置に見える。そのとき、両車が同じ速度で走っていると、400mの地点でも、300mの地点でも、200mの地点でも、つねに右45度の位置に同じように見えるので、相手のクルマが止まっているように勘違い=錯覚してしまうというわけ……。

 これを防ぐには、「この先交差点」の標識を見かけたら、目を動かすだけでなく、首を動かして左右の安全を確認すること。そうすることで角度が変わり、周辺視野ではなく、中心視野で捉えられるようになるので、相手のクルマを見落としにくくなるからだ。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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