二酸化炭素を極力排出しない水素社会の実現
「地域と一体になった低炭素水素サプライチェーン構築を目指して」と題して、神奈川県、横浜市、川崎市、岩谷産業、東芝、そしてトヨタ自動車による実証プロジェクト開始の発表会が行われた。
発表会に参列したのは、左から川崎市の滝峠雅介総合企画局長、東芝の大田裕之次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム統括部長、岩谷産業竹本克哉取締役産業ガス・機械事業本部副事業本部長、そしてトヨタの友山茂樹専務役員、横浜市の野村亘彦温暖化対策統括本部長、神奈川県の松浦治美エネルギー担当局長。
このプロジェクトは京浜臨海部における再生可能エネルギーを活用した水素サプライチェーンモデルの構築を図るというもので、2015年9月からその検討を進めてきたという。
今回の実証プロジェクトは、環境省委託事業「平成27年度地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択された事業で「京浜臨海部での燃料電池フォークリフト導入とクリーン/副生水素活用モデル構築実証」という事業名で、2015年度から2018年度までの4か年事業となる。
プロジェクトは、風力発電による水素製造するシステム、最適な水素供給のための貯蔵と輸送のシステム、燃料電池フォークリフトの導入利用、水素サプライチェーンの事業可能性という4つの実証テーマが検証される。
ちょっとわかりにくいが、つまり、二酸化炭素をできるだけ排出しないで、水素利用を進めようというもの。水を電気分解して水素を製造するための電力は風力発電で行ない、その製造した水素は燃料電池車ではなく燃料電池フォークリフト(FCフォークリフト)で使用するというもの。
具体的には、横浜市風力発電所「ハマウイング」の風力発電を利用して水を電気分解。二酸化炭素フリーの水素を製造。さらにこれを貯蔵・圧縮するシステムを同敷地内に整備。簡易水素充てん車で輸送し横浜市内及び川崎市内の青果市場や工場・倉庫などで使用される燃料電池フォークリフトで使用することになる。これにより、既存の電動フォークリフトやガソリンフォークリフト利用時のサプライチェーンと比べて80%以上の二酸化炭素削減が可能になると試算する。
実際にかかわる事業者は、東芝が電気分解装置を担当。東芝のこのシステムは発電量が安定しない風力による電力にあわせフレキシブルに水素の製造ができるというものである。
岩谷産業が水素圧縮機と簡易水素充てん車を担当。簡易水素充てん車は充てん圧力が35MPaであるため設備そのものをコンパクトにし、4トン車に積載することを実現。狭い敷地内で作業を続けるFCフォークリフトに水素を届ける配送型の水素ステーションといったところだ。
FCフォークリフトは豊田自動織機製となる。このFCフォークリフトは実証プロジェクトではMIRAIに使用されているFCユニットを搭載した新モデルが4か所の実証場所に12台が投入されるという(写真のフォークリフトは、クルーガーベースのFCHV-advに使用されたFCユニットを搭載しているひとつ前のモデルとなる)。
また、発電が不安定な風力発電のバックアップのために、プリウスの使用済み蓄電池を再利用するシステムも実験に使用される。風力発電の発電余剰分を蓄電池に蓄えておき、ハマウイングの風車が停止している状態の時でも水素充てん車への水素供給や水電解装置を稼働させることができる。これはトヨタタービンアンドシステムが担当する。ちなみに今回使用される蓄電池システムはプリウス180台分の蓄電池で構成される。
2016年秋ごろから試験的運用開始。2017年度から本格運用がスタートし4か年の事業となる。最終的には補助金なしで事業を継続できるように、そして他所でもこの仕組みで水素利用が進み、燃料電池車の普及につなげられれば、と関係者は語る。