コンプリートカーとして評価を高めてきたアルピーヌ
ゴルディーニがルノーのエンジン・チューニングの魔術師なら、ルノー・スポールの源流となったアルピーヌは空力マシンのスペシャリスト。小排気量で大排気量車に伍して戦うには、軽量コンパクトが必須だったし、ましてや全長6kmにも及ぶユーノディエールのストレートを駆け抜けるル・マン24時間に参戦するマシンならば、空力を追求すれば、それは大きなアドバンテージになる。
そうした背景のもと、ルノーの小型車をベース…と言うよりも主要コンポーネントを使って仕立て上げたコンプリートカーとして評価を高めてきたアルピーヌは、1973年にルノー傘下となりルノー・スポールに改組。今もスポーツ系のルノーを数多くプロデュースしている。
1959 Alpine A106 Mille Miles 2-door Coupe ミッレ・ミリアを名乗る最初の一歩
アルピーヌを創設したジャン・レデレは、自らもレーシングドライバーとして活躍していたが、彼がレースで愛用したルノー4CVをチューニングしたスペシャルモデルをベースに、1956年にリリースされた、アルピーヌで最初の市販モデルがA106ミッレ・ミリア。
タイプネームはルノー4CV用の1060系エンジンを使用していることからの命名。サブネームは、55年にプロトタイプがミッレ・ミリアにおいて、750cc以下のクラスで優勝したことをアピールしていた。搭載されるエンジンはアメディ・ゴルディーニがチューンした750ccのプッシュロッド直4。最高出力は48馬力までパワーアップされ、ジョバンニ・ミケロッティがデザイン、車重が550kg前後と軽量だったFRP製のボディを153km/hまで引っ張った。フランス東部のマノワール自動車博物館にて撮影。
1963-77 Alpine A110 2-door Berlinette アルピーヌを代表する傑作スポーツに
1956年のA106、61年のA108に続いて63年に登場したモデルがA110。ルノーの戦略モデル、R8からエンジンなどの主要コンポーネントを移植。リアサスペンションも、それまでのスイングアクスルからR8のコンポーネントを使ったトレーリングアーム式にコンバートされた他、ツインダンパーを備えるなど、A106やA108に比べてサスペンションはよりヘビーデューティなものに仕立てられている。
新しいタイプネームはR8のそれがR1100系とされていることに因んだもの。エンジンは、ベースモデルには1Lのプッシュロッド直4が搭載されていたが65年に登場した“ツール・ド・フランス”ではR8ゴルディーニ用の1.1Lが与えられ、70年からラインナップに加わった1600にはルノーのR16TS用が流用されている。写真は2015年のレトロ・モビルで撮影したもので、オーバーフェンダーと幅広のスリックタイヤなどからはグループ4仕様と推察されるが、詳細は不明。