バブル絶頂期に人気だった「スペシャリティカー」と「六本木カローラ」
クルマでブームといっても、最近ではミニバンとかエコカー、コンパクトカーだろう。ブームになるのは別に悪いことではないけど、なんかマジメというか、クルマのカテゴリー自体がブームというのはなんとも生っちょろい。
そもそも、クルマをベースにしつつ、そこにプラスされるものでブームが起きるのが本筋だろう。だからこそ、異常に盛り上がる。思えば、その昔はいろいろなブームが起っては消えた。街道レーサーもそうだし、白いエアロをみんな付けていたハイソカーブームなんていうのもあった。なかでも、バブル絶頂期に起ったのが、デートカーブームだ。
デートをするためだけのクルマがブーム?
現代の目からすると「なんじゃそりゃ?」だが、文字通り、デートに使うクルマのこと。さらに正しく言えば、ある特定のクルマに乗っていれば、デートに誘えたし、楽しくデートできたし、デートのさらに先にナニかもあった。つまりクルマがないことには、男女の正しい交際(?)はなにも始まらない時代だった。
「移動は電車でいいっす」「運転はカッタリ〜」「彼女とはそこらでまったり」なんていうことは考えもしなかった。クルマがないといいオンナ(女子大生)とはデートできなかったわけ。もちろん、クルマならなんでもいいわけじゃない。いいクルマが価値観の中心にあるゆえ、ヘタに変なクルマに乗っていると逆にもてなかったりしたのだ。実にキビシー時代だった。
で、デートカーと呼ばれたクルマは何台もあるが、先駆け的なところでは、FFになって初めてのファミリア。しかも赤。これは「陸サーファー」なんていう言葉ができたほどで、ボードをルーフに乗せていればサーファーカットの女子大生をナンパできたという、「スカイアクティブいらずの破壊力」。まさに魂動全開である。
そして悲しすぎるニックネームが付いたのが、2代目ソアラ。ソアラといえばハイソカーブームの火付け役でもあるだけに、センスはチャラ目でグンバツ。しかも400万円もしたのは逆に利いた。で! 悲しいニックネームというのは「女子大生ホイホイ」。もうなにも申しません……。
デートカーは浮かれたバブルの産物でもあるのだが、その最盛期に起ったのが、3代目プレリュード VS S13型シルビアの頂上ライバル対決。どっちも今や絶版車だし、シルビアなんてドリ車じゃねーの、だけど、その昔は女子大生を横に乗っけてデートするクルマだったのだ。スペシャリティカーとも呼ばれていたな。
勝負は結局つかなかったというか、どっちも売れまくって両車とも勝者といったところ。そのほか、六本木のカローラ、BMW3シリーズ(E30)や小ベンツ、190Eなどのガイシャ勢は、ボディコンOLにも人気だった。
ちなみに乗るにも格好があって、サマーセーターを肩からかけたり、ポロシャツのエリを立てたり。またシップスのBD(ボタンダウン)シャツも人気で、下は白のコットンパンツかチノパン。そして足もとはローファーでキメと、まぁ石田純一みたいな感じを想像してもらえればよかろう。
髪型は、男はツーブロック(今のよりダッサイ)&サイドバックが人気で、登場したばかりのムースかデップでセット。ホットドックプレス(藤原ヒロユキのイラストなど)やポパイがバイブルだった。参考までに、女子大生はというと、ワンレンか兜みたいな聖子ちゃんカット。それか毛先がギザギザしたサーファーカットあたりがナウかった。と、金太郎アメみたいにみんな同じで、街にうじゃうじゃ。
女子大の校門前にズラリとデートカーが並ぶのは壮観だった。おかしいけど、これでよかったのだ。それでこそブーム。同じクルマ、同じ格好、バンザーイだ。
と、ここまで読んで当時を知らないひとからすると、でも中古をやっと買ってたんでしょ、だって大学生だから……。と思うかもしれないが、いや、まったくもって違う。”新車で買うのは当然”。財力をアピールする必要もあるから、新車でないとダメなのだ。
バブルだったから、ローンも簡単に組めたから、影ではもやし食ったかもしれないけど買えたのだ。中古買ったとか、ちょっとでも手抜いて序列が下がると、アッシーに転落だったからね。よかったんだか、悪かったんだか、凄まじいほどのデートカーブームでした。まさに時代は、国民総肉食のような厳しい時代だったのだ。