クルマの売れないこのご時世でも値引きはしない! 強気の販売で「買い得感」の少ない国産車5選 (1/2ページ)

市場の冷え込みで値引きの大きい車種が多いなか強気のクルマも

 今の日本車メーカーは、国内市場よりも海外を重視する。各地域の販売比率も、ダイハツを除くと国内市場は20%以下だ。世界生産台数の80%以上を海外で売る。

 そうなれば国内向けの商品開発も滞り、以前に比べると新型車の数が減った。売れ行きが一層下がる悪循環に陥っている。

 その結果、発売から5年以上を経過した設計の古い車種が増えて、相応の値引きをしないと売れない。値引きが少ない強気の車種は減った。

 仮に車両本体からの値引きを戦略的に抑えても、下取り車を高く買い取るなど、商談では融通を利かせることが多い。メーカーは「値引きを抑えてリセールバリュー(数年後に中古車として販売する時の価値)を高め、ブランド力を向上させろ」などというが、販売会社はクルマを売らなければ何も始まらない。強気の商売をしたら売れ行きが下がり、各種の代行手数料、車検や点検の仕事、保険の取り扱いなども逃してしまう。

 ただし、それでも値引きの少ない車種はある。

1)ダイハツ・ミライース

 まずは「値引きをしたくても無理なクルマ」だ。代表は低価格の軽自動車で、卸値に対して価格が安く、販売会社の受け取る1台当たりの粗利が少ない。値引きは販売会社の粗利から捻出するため、物理的に値引きできない事情がある。

 代表はダイハツ・ミライースだ。B・SA IIIは、緊急自動ブレーキのスマートアシストIIIやコーナーセンサーを標準装着して、価格は90万7200円と安い。販売店では「値引きができるとすれば、ディーラーオプションのカーナビなどに限られる。粗利が少額だから、車両本体の値引きはほとんど無理(ゼロではないが)。販売するメリットは、車検や保険の取り扱いになる」という。

2)スズキ・ジムニー

 ジムニーは最上級グレードとなるXCの価格が184万1400円、中級のXLでも167万9400円(価格は4速AT仕様)と高い。1台当たりの粗利も多そうだが、値引きは少額だ。

 その理由は受注が多いことにある。販売店では「現時点(2019年3月中旬)でも納期は約1年間」という。

 ジムニーは生産規模が小さく、発売時点の1年間の販売計画は1万5000台だった(ジムニーシエラは1200台)。スズキスペーシアの2018年(暦年)の届け出台数は15万2104台だから、ジムニーは約10%だ。ジムニーは2018年7月に20年ぶりのフルモデルチェンジを行い、需要が急増して、長期の納期遅延に陥った。今は多少増産しているが、納期はいっこうに縮まらない。

 そうなるとスズキとしては、わざわざ値引きして売る必要はなく、少額になった。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
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