MRだからこそ「天才タマゴ」と呼ばれる外観を実現したクルマも
室内パッケージングや騒音、振動面でデメリットが多いことから、昔から本格派のスポーツカー以外にはあまり採用されないMRレイアウト。しかし、今も昔もトップカテゴリーのレーシングカーではMRが主流であり、運動性能面では理想的なレイアウトであることは間違いない。今回は、MRを採用する国産車で思い出深いモデル3台をピックアップし、MRならではの美点があったことを思い出してみた。
1)トヨタ・初代エスティマ
国産ミニバンとしては、MRのメリットをもっとも上手く活かしたことで、歴史的な傑作ロングセラー車となった。MRには、フロアが高くなったり、エンジンの搭載位置が乗員に近いことで振動や騒音の低減が難しいなどのデメリットがあるが、それらを補ってあまりある魅力に溢れていた。
まず、「天才タマゴ」と呼ばれて幅広く愛された丸みを帯びたスタイリングはMRだからこそ実現できたもので、ファミリーカーとして誰からも愛されやすい要因のひとつになった。
ハンドリングでもMRらしい回頭性の良さやコーナリング中の安定感が得られ、まだミニバンが定着していない時代(90年代初め)にあっても、運転好きのお父さんからの評価が高く、当時のクルマ雑誌でも走行テストでは好結果を得ていた。「MRらしいハンドリングが味わえる」ことで、ミニバンにあまり関心のない層からも一定の評価を得た点でも稀有な存在だったといえる。1990年から2000年を迎えるまで販売された。
2)ホンダ・アクティ
軽トラック/バンの販売ではずっと先をゆくダイハツやスズキがFRを採用するのに対抗し、後発のホンダはMRを選択。軽トラック/バンの場合、FRでは超フロントヘビーとなることによって、空荷の際にサスペンションが跳ねがちとなるが、前後重量配分バランスに優れたMRではそれが最小限に抑えられるメリットがあった。
トラクション面でもFRより有利であり、雪道や泥濘路などの滑りやすい路面での走破性が高いなど、MRのメリットを軽トラック/バンで最大限に発揮。ハンドリングでもMRらしさが得られ、ホンダならではの高回転域の痛快なエンジンフィールと相まって、ドライバーズカーと呼べるほどのファン・トゥ・ドライブ性まで味わえたのだ。蛇足ながら、筆者はホンダのセールスマン時代にアクティトラックのハンドリングとエンジンフィールの良さに感動し、その後の配達業務時代にも、FRの軽トラックより明らかに仕事が楽しく感じられることを実感。
N-VANの登場により、軽バンのアクティは役目を終えたが、トラック版のほうはいつまでも健在であって欲しいと願う。