極端な運賃の引き下げは乗務員の収入減に直結する
東京23区及び武蔵野・三鷹市のタクシーをみると、ほとんどのタクシーの初乗り(1.052㎞)運賃は410円となっているが、なかには“380円”などといったものも走っている。
とはいうものの、タクシー運賃は事業者個々が勝手に設定することはできない。前出の東京23区及び武蔵野・三鷹地域では国土交通大臣が指定した初乗り上限410円から下限380円(その間に400円、390円もあり)のなか(公定幅運賃)から運賃を選び、管轄運輸支局へ届け出る仕組みとなっている。
前述の地域は“公定幅運賃制度”というものを採用しており、この制度では下限割れ運賃は変更命令の対象となり認められない。ただ“自動認可運賃制度”というものを採用している地域では、個別審査によって一定基準をクリアしていれば下限割れ運賃であっても認可されることがある。
2002年に施行された改正道路運送法によって、新規参入や増車が簡単に行えるようになり、各地でタクシーが街なかに溢れるようになった。それゆえ競争激化のために下限割れ運賃で営業するタクシーも増加した。
運賃が下がれば当然事業者の収入も減る。タクシーのような事業形態ではコストを減らせる部分が限られており、極端な運賃の引き下げは乗務員の収入減に直結しやすい。そのため長時間乗務などの無理な運行も常態化。当然ながらタクシーによる交通事故も激増し、大きな社会問題となった。そのような流れもあり、いまでは下限割れ運賃を認めない公定幅運賃制度が地域によって導入されている。
タクシー乗務という仕事は“3K職場”(きつい、汚い、危険/タクシー乗務では汚いはあてはまらないかもしれないので「稼ぎが少ない」、か?)の代表のようにいわれてきたが、ここ数年はどうも状況が変わってきているようだ。
いまの実態をお伝えしたい。