ローカルな広州モーターショーにも政府の息が! 人気のハズのドイツ車ブースが閑散としていたワケ

NEV規制を前に地元系ブースへの積極取材指令が出たか

 今年の広州ショーモーターショーはどこか雰囲気が違う……、11月16日のプレスデーの朝一番に会場を訪れて筆者は最初に感じた。

 そもそも広州モーターショーは、世界が注目する交互に隔年開催される北京と上海モーターショーに比べれば、ローカル色溢れるものであった。10年ほど前かと思うが、北京と上海モーターショーについて政府から、「EVなどを積極的に展示しなさい」と宿題が出されたとされる時期があった。

 いまでこそ中国系メーカーがこぞって“本物”のEVやPHEVをラインアップして展示しているが、当時は“なんちゃってEV”ばかり。ガソリン車に“EV”などといったステッカーを貼る、いわゆるステッカーチューン仕様のEVも多数展示された。車体の下を覗きこもうとしたり、ボンネットを開けようとすると説明員が飛んできて静止されることも珍しくなかった。

 そんなときでも広州ショーは我関せずとばかりに、ローカルモーターショーとして、“なんでもござい”といった内容で開催してきた。最近になって複数のワールドプレミアモデルが用意されたりするが、北京や上海モーターショーでは、衣装が華美だとして禁止されたコンパニオンのお姉さんがニッコリ会場で微笑んでくれるといった、いまでもローカルモーターショー色は色濃く残っている。

 しかし今回はどうも、出展者(外資系は除く)には「NEV(新エネルギー車)を積極展示しなさい」、そして取材するメディア(おもに地元メディアで、海外メディアは除く)には、「中国系メーカーのNEVを積極的に取り上げなさい」という、“宿題”が出ているような雰囲気に包まれていた。

 いつもなら閑古鳥の鳴いている、いくつかの中国系メーカーブースにメディアが集まっていたのには驚かされた。そして若い女性レポーターが見た目にもインパクトがいまひとつな印象の強い、オーソドックスなセダンスタイルのEVなどを熱心に、とくにウェブ系メディアが取材を行っていたのにはさらに驚かされた。とにかく取材クルーのなかで若い女性が目立っているのがどうにも違和感を増幅させていた。

 一方で、いつもは多くのメディアが訪れていて展示車の撮影に時間を要してしまう、VW(フォルクスワーゲン)、アウディ、BMW、メルセデス・ベンツなどのドイツ系ブースが閑古鳥というまではいかないものの、いつもより明らかにメディアの数は少なめで、スイスイと撮影することができた。どのブランドも積極的に新型車を発表しているのに不思議で仕方なかった。

 自動車産業について、政府が強い主導力を発揮する中国では、政府がモーターショーを“仕切る”ことは、上海や北京モーターショーをはじめ珍しいことではないが、そのなかで中央政府(北京)から距離が離れていることや、もともと広州(広東)地区の人の気質もあり、自主独立の雰囲気の強い広州モーターショーだが、2019年から始まるNEV規制などの前には今回のようなショーの体裁にせざるをえなかったのかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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