クルマは所有するものという考え方に変化
「若者のクルマ離れ」といわれるようになって久しい。実際問題、運転免許の新規取得数は微増(平成25年:110万1610人、平成28年:115万1434人 ※1)していたり、クルマの保有台数自体は右肩上がりだったりするのでクルマ離れというよりも、単純に新車が売れていないことを「クルマ離れ」と表現している部分もあるのだろう。公共交通機関の充実した都市部ではクルマが不要という意見もあるが、それは昔から同様でクルマが不要な人々の声がインターネットによって可視化されるようになったともいえる。
ちなみに乗用車の保有台数は、1989年(平成元年)が3071万2558台、2018年(平成30年)では6158万4906台である(※2)。これは保有台数なので新車販売とは異なる数字だが、見事にダブルスコアで増えている。若者が所有しているかどうかは別として、数字からはクルマ離れが進んでいるとはいいがたい。とはいえ、若者がクルマを持ちづらいという意見を否定するわけではない。実際、各種アンケート調査などではクルマを所有することを避けている傾向は見て取れるからだ。
その理由としていくつも考えられるが、「お金がない」、「給料が増えると考えづらい」といった漠然とした不安によるものだという指摘もある。クルマの価格は上がっているし、安易にローンを組むこともできないということだ。また、自動車諸税の負担が大きいという声もある。
しかし、自動車税の負担が大きいのは今に始まった話ではない。自動車税率が長らく据え置きされていること、ここ数十年の物価変動を考えると、実際の税負担は比率的にいえば昭和のほうが高かった。ローン金利についても明らかに下がっている。
たしかにグローバル化に伴い車両価格は上昇しており、その中で日本だけがデフレ基調にあったために新車の価格が高く感じるようになったという要素は否定できないが、現代のクルマ離れマインドを自動車諸税や車両価格によって説明するのは、素直に納得しづらい。
さまざまなカーシェアリングが増えてきていることからもわかるように、すでに『クルマを所有するというライフスタイルが圧倒的多数派ではなくなった』と捉えるべきだろう。合理的に判断して、必要なときにクルマを利用するという風に時代は変化している。
その意味では、仮に車両価格が大幅に下がり、税金などの維持費負担が軽くなったとしてもクルマを所有するというマインドになるとは考えづらい。そして、それは世界的なトレンドでもある。「クルマを買えない」のではなく、「クルマを買わない」のだ。
※1:運転免許統計 平成29年版 警察庁交通局運転免許課
※2 自動車保有台数の推移 自動車検査登録情報協会