アメリカでは当たり前のようにピックアップトラックを見かける
日本では、古くはガソリンスタンドのダットラ(ダットサン・トラック)に代表されるように、ピックアップトラックは商用車そのものである。だが最近は、日本では電気工事や土木工事の作業車でも、ハイエースやキャラバンなどのミニバンを使用することが多くなり、ピックアップトラックの出番はなくなってきた。
一方、視線をアメリカに向けてみると、全米各地の街中やフリーウェイでピックアップトラックが溢れかえっている。ベストセラーのフォードFシリーズを筆頭に、GM(ゼネラルモーターズ)ではシルバラード、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービル)ではラムトラック、トヨタではタンドラとタコマ、日産はタイタンとフォーチュナーなど、日米各社のピックアップトラックが揃い踏みだ。
一般的に、ピックアップトラックはボディ・エンジンサイズによって大きくふたつに分類される。大きい方がフルサイズ、それよりひと回り小さいのがミッドサイズだ。
ピックアップから派生したSUVブームがピックアップ人気を呼んだ
アメリカでピックアップトラックの販売台数が増え始めたのは、90年代に入ってからだ。80年代までは、ピックアップトラックは土木工事や農業などに携わる人が使う作業車というイメージが強かった。それが90年代になり、ネクタイを締めたビジネスマンや家庭の主婦が乗用車としてピックアップトラックに乗り始めたのだ。
きっかけは、ジープチェロキー、GMシボレータホ、フォードエクスプローラなどのSUVブームだ。そもそもSUVはピックアップトラックと同じく商用車、または一部のアウトドア愛好家のための特殊なクルマだった。それが、街乗りで乗るのがオシャレだというトレンドが広がったのだ。
SUVが売れることで、SUVに大きなリヤデッキがついたクルマとして、ピックアップトラックが乗用化され始めたのだ。アメリカ人は庭や家の手入れでまめにする人が多く、自宅に工作機械や大型の芝刈り機などを所有するケースは珍しくない。そうした機器や大きな家具の運搬、またスーパーマーケットでドカ買いしたときなど、ピックアップトラックが便利だと気が付いたのだ。
よくよく考えてみると、SUVブームがピックアップトラック需要を掘り起こすとは、なんともおかしなことだ。なぜならば、SUVはピックアップトラックのリアデッキにハードカバーを付ける発想から生まれた商品なのだから。2018年現在、アメリカ人にとってピックアップトラックは我が家の力強い相棒である。