新星ロシアンブランドが開発した高級リムジン
前回に引き続き、四輪車では西ヨーロッパ系メーカーはルノーのみ、日系と米系ブランドはいっさいショーへの参加がなかったモスクワ国際オートサロン(以下モスクワショー)。
そんなモスクワショーだが、開催前から話題を独占していたのが、ショー開催前にネットニュースなどで“プーチン大統領専用車”として紹介されたリムジンの民生版とされた、新生アウルスブランドの“セナート”である。
ロシアの工業力を結集して開発されたといってもいいそのリムジンは標準ホイールベースモデルとともにワールドプレミアされた。事情通氏によると「プーチン大統領専用車の民生版という触れ込みでしたが、実際はその逆となるようです。いきなり新しい高級車ブランドを立ち上げても残念ながら世の中の反応は冷たいでしょう。そこで『プーチン大統領が乗っているそのクルマです』というのは、セールストークとしては十分すぎます。つまりセナートはプーチン大統領を広告塔にしてデビューしたともいえるのです」とのことであった。
事情はどうあれ、事前の“プーチン大統領の専用車”というキャッチはインパクトがかなり大きなようであった。ショー会場を訪れた地元ロシアの人々が「まずはセナートに」とばかりにアウルスブースに吸い込まれるように入っていくのであった。その姿はまるで日本的に言えば“お伊勢参り”のような様子であった。ご神体がさしずめステージ上のセナートというわけである。
超高級車の割には実車近くまで近寄ることもできたのは、一般大衆に広く認知してもらおうという配慮なのかもしれない。一般大衆も“ロシア=大国”という意識はしっかり持っているので、「新星ロシアンブランドが開発した高級リムジン」と聞けば、見に行かずにいられないのは当たり前の話ともいえよう。
失礼を承知で言えば、ロシアで開発された超高級車ということだったので正直あまり期待していなかった。しかしその完成度の高さには、まさに舌を巻くものがあった。そのオーラを、実車を見に来たひとも感じたはずだ。そうなれば、まさに“セナート参り”といってもけっして大げさではない。お参りのあとは自撮りや知人によって、セナート絡みの記念撮影を行っていた。
前述したように、出展メーカーが少ないモスクワショーは国際モーターショーというよりは、ドメスティックショーといったほうがいいぐらいの内容になっているが、このアウルス・セナートのほかにも、ラーダからは日本人にはニーヴァの車名で知られ、30年以上も生産が続いている、ラーダ4×4の後継車と思えるコンセプトカーが発表されるなど、ロシアンブランドが大健闘してショーの盛り上げをはかっていた。
一部では政治的対立が今日の出展メーカーの激減につながっているとの話もあるが、次回2020年開催の時は、再び世界のメーカーが大集結するようなショーになってもらいたいものである。