登録車の2台に1台はトヨタ車という現実
軽自動車より大きな登録車で、シェア5割を誇るトヨタ。軽自動車でも、子会社のダイハツがシェア3割を誇るなど、日本市場ではトヨタの強さが目立つ。では、なぜトヨタはそれほどまで、ほかの自動車メーカーを圧倒しているのか?
その背景にあるのが「ウチは、トヨタではないから」という言葉だ。トヨタ以外の日系自動車メーカーの関係者がよく使う。この「トヨタではない」という文脈にはさまざまな解釈があり得る。
たとえば、「トヨタのように研究開発費が潤沢ではない」、または「トヨタのように大規模な子会社を取り揃えている状況ではない」といった解釈である。つまり、トヨタはトヨタ自動車という単体ではなく、トヨタ車体やトヨタ自動車東日本(旧関東自動車)などの自動車の設計・製造を行う企業、そしてデンソーやアイシン精機、アイシンAWなど売上高では日系自動車メーカーの中位クラスと同レベルにあるほど大規模な部品メーカーなどを率いる、自動車コングロマリットなのである。だからこそ、他社を圧倒する数多くのモデル展開を維持することができるのだ。
それほどまでに、トヨタはグループ全体として他社を圧倒する資金力を持っていることを、自動車業界に関わる多くの人たちが知っている。一方で、一般の自動車ユーザーは、まさかほかの自動車メーカーがここまでトヨタと自社との大きな差を自認しているとは夢にも思わないだろう。だが、これが自動車産業界の現実なのだ。
販売網の強さもトヨタが圧倒する理由のひとつ
このように製品企画、設計、実験、購買、製造という製造業として強みを見せるトヨタだが、トヨタの強みの秘密は、まだほかにもある。それが、強靭な販売網だ。
トヨタは現在、トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店、さらにレクサスという5つの販売チャンネルを持つのだが、トヨタ本社が直接的に資本参加している企業は少ない。これは、本社の系列下になる販売企業が多いマツダやスバルとはまったく逆の状況だ。
こうした、各都道府県での地場資本の販売企業が、トヨタの販売力の強さを下支えしている。トヨタに対して事業の独立性を主張し、トヨタからクルマを仕入れるという意識があることが、トヨタ主要販売企業の「必死で売る気」を生んでいるのだ。
さらにいえば、トヨタが他社を圧倒する大きな理由に、変化をいとわない思い切った経営判断にある。昨今では、コネクテッドや自動運転についてアメリカのIT産業界との連携を深めたり、新しい交通ビジネスであるライドシェアリングの企業や人工知能の開発企業に投資するなど、時代の変化を読む嗅覚が他の日系自動車メーカーよりも強いとの印象を受ける。
「ウチはトヨタではないから」。こんなセリフが飛び交うようでは、トヨタのひとり勝ちを誰も止めることはできない。