今インドネシアで「トヨタ・ヴォクシー」の人気が急上昇しているワケとは

日本における人気車だということがステータスのひとつ

 インドネシアではMPV(多目的用途車)の人気がかなり高い、3列シートで7~8名ほどが乗車できる、日本でいえば“ミニバン”に相当するモデルである。インドネシアでは三世代同居など大家族で生活することが多いので、その意味でも多人数乗車可能なモデルの引き合いが多いようである。ただ経済成長に伴ってそれなりに核家族化も進んできており、ここのところはパーソナルユース色の強いモデルの人気も出てきている。

 トヨタは昨年のGIIAS(ガイキンド・インドネシア国際オートショー)において、ヴォクシーのインドネシア市場投入を発表した。そして実際に発売してみると見事大ヒット。日本からの完成車輸入販売となるヴォクシーだが、輸入台数が追加されるほどの大人気となっているのである。ちなみにもともとトヨタはインドネシアにおいて、先代ノアベースの“NAV1”というミニバンをラインアップしており、いまもヴォクシーと併売されているが、人気面では圧倒的にヴォクシーとなっている。インドネシアで人気

 ヴォクシーが大ヒットしている理由は単にミニバンだからというものではない。その押しの強いキャラクターが人気をさらに後押ししているのである。

 インドネシアを含む、タイや香港などの東南アジア地域ではアルファード&ヴェルファイアの人気は“絶大”といっていいものになっている。インドネシアでも当然ながらアルファード&ヴェルファイアを正規完成車輸入して販売されているが、ヴェルファイアのスタート価格は約1077万円とかなり高額なものとなっている。

 つまり東南アジアの富裕層の多くがアルファード&ヴェルファイアを気に入って購入しているのである。日本人が見てもその押しの強さはハンパではないアルファード&ヴェルファイア。正規輸入モデルでは飽き足らず、日本から日本仕様の個人輸入車を乗っている富裕層も目立つ。

 正規輸入車には装着されていない、助手席側の“キノコミラー”や、リヤウインドウに貼られた排気ガス規制のステッカーなどは、日本人のなかには“格好悪い”と思うひとも多いかもしれないが、東南アジアのユーザーにとってみれば、“日本と同じ”ということで格好良くステイタスの高い証となっているのである(排気ガス規制のステッカーは偽造品も出回っているし、キノコミラーをあえてアルファード&ヴェルファイア以外でもあえて装着するユーザーもいる)。

 日本でもその昔、カリフォルニアのナンバープレートをつけるのがかっこよかった時代もあったので、ノリはそれと同じようだ。

 アルファードやヴェルファイアに注目が集まるとはいえ、現地通貨で10億ルピアもする高級車を買える層は限られている。そこでヴェルファイア並みの押しの強さをもっていながら、価格が4億4250万ルピア(約442.5万円)からとなり、ヴェルファイアの半額以下で買えることもあり、人気に拍車がかかったようだ。

 確かにジャカルタ市内を移動していると、結構な頻度でヴォクシーを見かけることができた。アルファード&ヴェルファイア、そしてヴォクシーが日本でも絶大な人気を誇っているという事実ももちろん、インドネシアでの人気を押し上げているのは間違いないといっていいだろう。また、ヴェルファイアクラスまでは手が届かないけど、ヴォクシーならなんとかなるといった、そこそこ裕福な中間所得層のようなものが、国の成長とともに増えてきている証なのかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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