欧州においてストロングハイブリッドではライバル不在
ついに欧州で、トヨタのハイブリッド人気に火が付いた。過去10年ほど、ジュネーブショー、パリショー、フランクフルトショーなど欧州各地のモーターショーで、トヨタは一貫して「ハイブリッド推し」だった。
一方、ジャーマン3(ダイムラー、BMW、VWグループ)をはじめとする欧州勢は、ディーゼルを中心として、排気量をダウンサイズしたガソリンターボが目立った。そして近年では、EV技術の転用したプラグインハイブリッド車の導入が増えたが、ハイブリッド車の新規参入はほとんどなく、ハイブリッド車ではトヨタが独走態勢に入った印象だ。
トヨタによると、今年1〜3月期に欧州市場で発売したトヨタブランドのハイブリッド車の総数は11万3100台に達した。これは、前年同期比で20.2%増で過去最高を更新したことになる。モデル別では「ヤリス(ヴィッツ)」「オーリス」「C-HR」など欧州向け主力モデルのハイブリッド化は、ほぼ完成している。
先日もスイスで「C-HR」のレンタカーを借りて、フランスを含む各地を走ったが、街中でも高速道路でもトヨタのハイブリッド車が増えてきていることを実感した。
そもそも、どうして最近、欧州市場でパワートレインの電動化が加速しているのか? その理由は、欧州委員会(EC)が策定したCO2規制への対応だ。具体的には、2021年までにリッターあたり95gを要求している。これは、アメリカ、日本、中国のCO2規制や燃費規制と比べてもっとも厳しいレベルだ。
この数値をクリアするために、欧州メーカーがまず開発したのが投資コストが少ない、発電機とモーターを併用するマイルドハイブリッド車だった。ところが、ECは現在、2030年までに2021年(リッター95g)の30%減を想定した議論に入っており、欧州メーカーとしてはEVを念頭に置いたプラグインハイブリッド車の市場導入を強化せざるを得ない状況だ。
また2015年に発覚し、最近ではアウディの社長が身柄を拘束される事態が起こっているVWグループのディーゼルスキャンダルも、電動化への転換が加速している大きな原因だ。2016年にVWグループが発表した中期経営計画のなかで「EVシフト」を掲げたことが、欧州と中国を中心としたEVブームにつながった。
このようにさまざまな社会事情が重なって、欧州市場ではディーゼル離れと電動化シフトが同時に進んでいる。こうなると、これまで独自の技術で黙々とハイブリッド普及活動を続けてきたトヨタにとっては追い風が吹く。
欧州メーカーはEVありきの電動化であるため、完全EV化までの間は高コストなプラグインハイブリッド車で中継ぎをする必要がある。マイルドハイブリッドとプラグインハイブリッド車の中間であるストロングハイブリッド車については、トヨタやトヨタ系大手部品メーカーが主力技術を持っているため、欧州メーカーにとっては手が出しにくい領域だ。
以上のような業界図式を考慮すると、少なくとも今後5年間は欧州市場でのトヨタHV優勢が続くだろう。