重い荷物の場合は直進性などに影響することも
クルマに限らず人でも自転車でも運動する物体は、前後左右の重量バランスができるだけ均等であるのが望ましい。飛行機(旅客機)はロードコントロールといって、手荷物や貨物などの搭載位置を調整し、飛行機の重量や重心位置を細かく計算・調整し、機長は出発前に離陸重量、着陸重量、重心位置、重量分布を確認することが義務づけられているほど(ウエイトアンドバランス)重視している。
クルマだって同じで、レーシングカーでは、コーナーウエイトといって、静止時に四つのタイヤにかかる荷重を測定し、それを最適化することは大事なセッティング要素になっている。乗用車だって、この重量バランスの重要性は変わらない。
とくにトランクはそのスペースの大半がリヤの車軸より後ろにあたるので、重心からの距離も遠く、重さが運動性能に与える影響が大きくなる(重心からの距離×質量=慣性モーメント)。およそ車体重量の10%ぐらいまでは神経質にならなくてもいいが、それ以上重い荷物を積むときはトランク内で偏らないように気配りしないと、右コーナーと左コーナーで旋回のしやすさが変わったり直進性が悪くなったり、トラクション性能や、ブレーキ時の安定性などに悪影響が出る可能性がある。
重たい荷物はできるだけクルマの中央より=バルクヘッド(後部座席)に近い位置で、左右の位置でも真ん中に来るように乗せるのがベスト。リヤシートが空いていればリヤシートに載せたほうが、操安性はよくなる。
また、走行中にトランクの中で荷物が簡単に動いてしまうと、“ムービングバラスト”のようになってしまうので、トランクネットや収納ケース、滑り止めマットなどの荷物固定ツールを上手に使って、ある程度固定できるようにするといい。
乗員が運転手一人だけなら、トランクの左寄りの前方に積めば、ドライバーの位置と対角線になり(右ハンドルの場合)、前後左右の釣り合いがとりやすいともいえるが、そこまでこだわる必要はないだろう。いずれにせよ、重量物はできるだけ車体中央寄りの低い位置に固定するのが基本。
重量バランスが悪いクルマは、まっすぐ走るだけでも微調整が必要になり、そのことをとくに意識していなくても、その分ドライバーの疲労が増すので、ある程度の質量の荷物を積むときは、荷物が偏らないよう、ひと工夫するようにしよう。