交通事故の死亡者数で見ると助手席が少ない
年々、交通事故による死者数は減っている。その理由は大きく2つ考えられる。ひとつは事故そのものが減っていること。もうひとつは、乗車している人間を守る機能が高まっていることだ。いまや衝突実験後にドアがスムースに開け閉めできるのは当然といえるくらいキャビンの変形は抑えることができるようになっている。さらに各種のエアバッグが装備されるようになったことで、致命傷を負うケースも減っている。実際、平成29年の自動車乗車中の死者数は1221名で、平成19年の2032名に対して、半分近く減っている。
では、座る場所によってクルマに守られる度合いというのは変わってくるのだろうか? 警察庁が発表した「平成28年における交通死亡事故について」というレポートには、座席別の死者数がデータとして載っている。それによれば自動車乗車中における交通事故の死者数1338名のうち、運転席が1004名、助手席が155名、後部座席等が179名となっている。一目瞭然、運転手が亡くなっているケースが圧倒的だ。
しかし、これは当然で、クルマが事故を起こすときは、よほど特殊なケースでないかぎり運転手が乗っていないことはないからであって、この数字をもって運転席が危険というのは統計の見方としては間違いだろう。
注目すべきは、平成18年の数値を100としたときの座席別死者指数だ。どの座席でも死者数は減っているが、運転席は55、助手席は43と半減しているのに対して、後部座席等は86と減少の度合いが少ない。実際、かつては助手席の死者数のほうが多かったのに、平成27年以降は逆転され、助手席のほうが安全な場所となっている。
その理由は、エアバッグなどの安全装備が前席のほうが充実しているから……ではない。前述した警察庁のリポートには大きく次のように書かれている。
自動車乗車中死者のシートベルト着用状況を見てみると、全体の42%はシートベルト非着用であり、座席別に見てみると、後部座席等は運転席や助手席と比べて非着用の割合が高い。
シートベルト非着用時の致死率は、着用時の場合の約14.5倍高い。衝突安全ボディとなったいま、乗車中に亡くなってしまうかどうかを分けるのはシートベルト装着の有無といえる。ベルトをしていなかったばっかりに車外放出されてしまい、それが致命傷となってしまうケースも少なくない。交通事故のニュースでも運転手は軽症なのに後席乗員が亡くなってしまったといった事故を目にすることはあるだろうが、おそらくシートベルトの装着が分かれ目となってしまったのだろう。
ちなみに、乗車中に後部座席等で亡くなってしまった人の57%はシートベルト非装着だったという。助手席では71%の方がシートベルトを装着していても亡くなったことを考えると(つまり、シートベルト装着の有無にかかわらず死亡事故になるような大きな事故だったと考えられる)、後席の死者数はシートベルトを装着するだけで、グッと減らすことができるはずだ。
【詳しくはこちら】
警察庁:平成29年における交通死亡事故 の特徴等について
https://www.npa.go.jp/toukei/koutuu48/H29siboubunnseki.pdf
警察庁:平成28年における交通死亡事故について
https://www.npa.go.jp/toukei/koutuu48/H28_setsumeishiryo.pdf