追突・落下物の危険以外に渋滞の原因にもなる
車間距離が大切な理由、それはひと言でいえば「クルマは急には止まらない」から。なぜ、急には止まれないかというと、走行中の(停車中の)クルマには、学校で習った「慣性の法則」が働いているため。
・慣性の法則とは
「物体に外部から力がはたらかないとき、または、はたらいていてもその合力が 0 であるとき、静止している物体は静止し続け、運動している物体はそのまま等速度運動(等速直線運動)を続ける」。簡単にいえば、「クルマのような大きな物体は、大きな力を与えないと動き出してくれないし、一度動き出すと、今度は質量に比例してはなかなか止まってくれない」という慣性の法則に支配されているということ。
道路を走っていれば、前のクルマが何らかの理由で急停車することもあるし、人や動物が飛び出してくることもあれば、落下物が落ちていることもある。(高速道路だけで年間平均33万件以上もの落下物が回収されている)
こうした危険を回避するためにも、十分な車間距離を確保することは非常に重要だ。道路交通法にも、「車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その車両が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない」(26条1項)とあり、これを守らないと違反点数2点/反則金9000円のペナルティが課せられる。
また車間距離が狭くなると視野が狭くなり、危険や落下物に気付くのが遅れ、回避する余裕がなくなるというのも大きな問題。とくに大きなクルマや背の高いクルマの後ろについたときは車間距離を広めにして、視界を確保したほうが安全だ。
もうひとつ、道路上のクルマの流れには波があるので、前走車の加速・減速に合わせて速度調整が必要になる。そのため車間距離が近いとちょくちょくブレーキを踏むことになり、結果としてそれが渋滞の原因になることもわかっている。つまり渋滞の原因を吸収するためにも適度な車間距離が必須であり、高速道路では40m以上の車間距離があれば「渋滞吸収運転」が可能になるというデータがある。
さらに車間距離が狭まると前走車に必要以上のプレッシャーをかけることになり、話題の“あおり運転”と捉えられる可能性も大きい。また、前のクルマに接近することで前方ばかり注視することになり、バックミラーや周囲を見る余裕がなくなる問題も……。
道路交通法には具体的な車間距離の数字までは記されていないが、車間距離は距離ではなく前走車から2秒以上離れて走るのが基本だということを覚えておこう。その根拠は、反応時間と制動距離。例えば、100km /h=秒速約28mから、フルブレーキで停車するには、一般的な小型車でざっと42mほど。
危険を感じてブレーキを踏むまで0.2秒。ブレーキを踏んで止まるまでが1.5秒。少し余裕をみても、2秒間分の車間距離があれば大丈夫という考え方。欧州でも、「危機を認識しブレーキを踏むまで1秒。ブレーキが効果を発揮するまで1秒」で、車間距離2秒のルールが定着している。(車間距離2秒の例 40km/h=22.2m 100km/h=55.6m)
「もっと車間距離を詰めないと、ほかのクルマに割り込まれてしまう」と思うかもしれないが、交通事故の3件に1件は追突事故(年間約20万件)。こうした現実を考えると、十分な車間距離は絶対に必要だ。とはいえ自分の前方はガラガラ、自車の後ろには後続車が数珠つなぎというのは大迷惑なので、速やかに「お先にどうぞ」と道を譲ってほしい。