整備された交通インフラやカーナビの発達も要因のひとつ
欧州では高齢者や女性も平気で200km/h巡航をこなす
ヨーロッパでは女性も高齢者も、平気な顔してマニュアル車に乗っている。その理由は、オートマチック車に比べて新車の価格が安く、そして燃費も良いからだ。マニュアルシフトとクラッチペダルの操作は身体の一部になっていて、市街地でも高速道路でも皆さんスムースな運転だ。
ドイツではお馴染みの、速度無制限区間もあるアウトバーンでも、高齢者が平気な顔をして200km/h以上でクルージングしている。
パリ市街でタクシーに乗ると、渋滞を避けるために細い裏道をスイスイ抜けていく。しかも、かなりペースが速い。雨でも降れば足もとの路面は石畳で滑りやすくなるが、それでもかなりのハイペースで、ときにはカウンターステアをあてたりしてスイスイと走る。
つい先日も、スイス、フランス、そして北欧各国を巡り、自らレンタカーをドライブしたが、周囲のクルマたちの動きはとても機敏だとあらためて思った。
とくにラウンドアバウトでの「間合い」が上手い。ラウンドアバウトとは、信号機のない円形交差点だ。交差点内に先に入ったクルマに優先権があるが、朝晩のラッシュ時では入れるスキがほんのちょっとしかない。そんな微妙なタイミングを、高齢ドライバーでもしっかり見抜いていて、ラウンドアバウト周辺で無駄な渋滞が起こることはほとんどなかった。
日本人の遠慮がちなメンタリティも影響している
ヨーロッパ以外では、アメリカは市街地でも平均速度が60〜80km/hであるなど、走行速度が高いのが特徴だ。そのため、日本に比べると急ブレーキをかける頻度が多い。つまり、クルマの挙動が大きいのだが、高齢ドライバーでも大型SUVでガツンとブレーキをかけることに慣れている様子だ。
また、インドや東南アジアの都市部の道は、クルマ、バイク、自転車、三輪車などがゴチャゴチャに走っているが、阿吽の呼吸で皆さんスイスイとすり抜けていく。
こうした世界各地の道路事情や運転事情を定常的に体験している身として、「日本人は運転が下手だな」と思う。
なぜ下手かというと、道路の舗装のクオリティが高いとか、信号機や標識が整備されているとか、または高精度なカーナビが普及しているといった交通環境が整い過ぎているため、人の運転技量が上がらないのだ。
また、世界各国と比べると、日本人は引っ込み思案でおとなしい性格の人が多い。そうした国民性は運転にも反映されて、合流での譲り合いの精神など良い面もあるのだが、アグレッシブで上手い運転という尺度で見ると、運転はけっして上手ではないという印象を受ける。とくに、商業ドライバーが減る日曜や休日の、いわゆるサンデードライバーの運転レベルは世界標準で見てもかなりレベルが低いと思う。