ドリキン土屋圭市がミシュランPSシリーズ一気乗り! 全開走行で徹底リポート

それぞれグリップは違えど乗り味は統一されている

 オレの中でミシュランのイメージはと言うと、ストリートタイヤもレーシングタイヤ含めてハズレがないのと、どのクルマと組み合わせてもバランスがいいことだ。

 いつも不思議だな……と思うのは、サーキットで走らせた際に、タイヤからドライバーへ伝わるグリップ感はライバルメーカーのタイヤのほうが高いけど、実際に1周走ってくるとタイムがいい(笑)。つまり、タイヤだけが主張するのではなく、クルマの一部として溶け込んでいるようなタイヤなのだ。

 タイヤはパッと見どれも「黒くて丸い物」だが、その中身はテクノロジーの塊で、各メーカーのノウハウや技術力が凝縮されている。今回WEB CARTOP編集部から「ミシュランのスポーツタイヤシリーズ3種類を筑波サーキット1000でテストしてほしい」と言う依頼がきた。オレは現役時代にタイヤ開発も行なっていたので、タイヤに関してはちょっとうるさい。

 まずミシュランのスポーツタイヤシリーズの中でもっともベーシックなのが「パイロットスポーツ4(PS4)」。BMW M240iと組み合わせで走らせてみた。

 スポーツタイヤとは思えないほどのしなやかさで快適性も高いが、ステアリングを切る→Gが掛かる→サスペンションが動く→タイヤが動く、といった流れの一体感の高さと、決してタイヤが主張することなくクルマと上手く調和している点にビックリ。また、1から10までのインフォメーションがおだかやな上に均等で扱いやすいので非常に乗りやすい。

 つまり、走りを純粋に楽しめるので、結果としてグリップもドリフトも自由自在……と言うわけだ。これはコンパウンドだけでなく構造にも秘密があるのだろう。

 続いては、世界の名だたるスーパースポーツカーの足もとを支えるパイロットスーパースポーツの後継モデルとなる「パイロットスポーツ4S(PS4S)」をBMW M2の組み合わせでコースイン。

 PS4よりも絶対的なグリップは高い上に、ステアリングを切った時にはシャープで軽快な動きになっているなど、よりスポーツ性を高めた性格になっている。構造的にはPS4と比較すれば硬めではあるものの、一般的なスポーツタイヤと比べると決して硬くない。PS4はタイムを気にせず楽しむタイヤだと感じたが、PS4Sだとタイムを出してみたくなった。

 ちなみに、BMW M2の3リッター直6ツインパワーターボは370馬力/465N・mのパフォーマンスだが、更にハイパワーのスーパースポーツまで対応するタイヤだけあり、ポテンシャルは相当高い。それでもPS4で感じたインフォメーションの豊かさや楽しさ、スポーツタイヤでも静粛性や快適性を犠牲にしない、タイヤだけが突出することなくクルマと一体化……と言ったミシュランの基本の部分は不変だ。

 最後はミシュランのストリート向けスポーツタイヤの最高峰「パイロットスポーツカップ2(CUP2)」だ。PS4Sがストリートとサーキットの比率8:2に対して、CUP2は2:8と言う性格はトレッド面を見ても明らかだ。

 グリップの高さはいわゆるSタイヤに近いイメージ。PS4Sに対してコーナーへの飛び込み速度もコーナリング速度もアップしているが、サーキット向けタイヤながらも、扱いやすさや先が読める部分などは、PS4/PS4Sの延長線上に位置している。もちろん、絶対的なグリップが高いため1から10までのインフォメーションの感覚の幅は短くなっているが感覚は同じ。突然タイヤに裏切られることはなく、ドライビングが楽なのは変わらない。

 今回3種類のスポーツタイヤに乗ってわかったのは、濃い薄いと言った差はあるものの、目指す方向性は同じで一切ブレていないことだ。ユーザーは用途や走らせるステージに合わせて選べばいい。

 オレのオススメはクルマの動きを知るならPS4、街乗りからサーキットまでオールマイティならPS4S、そしてさらに上を目指してタイムを狙うならCUP2だ。ちなみにどのタイヤもスポーツタイヤながら耐摩耗性が高いのと連続周回時の熱タレの少なさも嬉しいポイントだ。途中で履き替えたり、行き帰りに違うタイヤに交換するのは面倒でしょ(笑)。家からそのままサーキットへ行き、思いっきり楽しんだあとに普通に帰れるタイヤ、ナンバー付ならそこまで考えないと……ね。オレの経験で言えば、それを可能にしているのは、ゴムだけに頼らず構造もシッカリしている証拠だ。

 どのモデルも「クルマ本来の性能が味わえるタイヤ」、「でしゃばらないタイヤ」、「癖のないタイヤ」だと思う。世界のハイパフォーマンスモデルがこぞって純正採用する理由も納得だ。

 ただ、その一方でオレのような庶民にとってミシュランは、「高級車用のタイヤ」、「値段が高い」と言うネガなイメージもあるが、ミシュランの関係者に今回テストしたタイヤの値段を聞くと、オープンプライスなので単純には比較できないが、ライバルと同等レベルの市場価格を想定していると聞いてビックリ。じつは「ミシュランは高い」は単なる世間の思い込みだった(笑)。

 世界にはごまんとスポーツタイヤが存在するが、ミシュランは街乗りからサーキットまでオールマイティ、普段はしなやかなのに、いざと言う時はシッカリとグリップ、ドライ/ウエットでの性能差が少ないなど総合性能を大事にしている。

 ミシュランはこれまでモータースポーツで数多くの栄冠を勝ち取っているが、その多くはル・マン24時間など耐久レースが多い。耐久レースで勝つための秘策は気合ではなく、いかに速く/安全に/楽に走らせられるか……だ。それはストリートタイヤに求められる要件とまったく同じ。つまり、ミシュランのモータースポーツ活動はPRのためだけではなくストリートタイヤ開発のために行なっている。タイヤ作りの哲学がブレないから、どのタイヤに乗っても同じ“味”がするのだ。

【問い合わせ】

◆日本ミシュランタイヤ株式会社
お客様相談室 0276・25・4411

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