2.4Lエンジン搭載! 2019年型三菱アウトランダーPHEVの大幅進化っぷりを開発者に直撃
まずは乗ってほしいと開発者は語る!
三菱自動車はアウトランダーPHEVのマイナーチェンジモデルを、スイス・ジュネーブモーターショーで発表した。同社フラッグシップモデルの改良に携わったプロダクトマネージメント部の松井孝夫さんと、パワートレイン技術開発本部チーフテクノロジーエンジニアの澤瀬 薫さんに話を伺った。
松井さん「アウトランダーPHEVは日本よりヨーロッパの方が売れています。ヨーロッパで10万台を突破し、全世界では14万台を売り上げています。今回の2019年モデルは、売り上げをさらに伸ばして行きたいと考えています。ヨーロッパではディーゼルの問題が多く、それに変わる新しいパワープラントを探している中で、アウトランダーPHEVは適したモデルだと思います」
では、あらためて今回ジュネーブショーで展示されたアウトランダーはいったいどこが変わったのだろうか? エンジンと中身を変えたと聞いたが、外観の変更は最小限に留められているように見える。
松井さん「フロントはヘッドライトのデザインを変更しました。ハイビームもLED化し、ライトまわりのデザインを変更しています。そこに合わせ、グリルの処理やフォグランプ付近の架装もリファインしています。そのほかはアルミホイールのデザインを変更し、リヤスポイラーを装着。シートの革のデコレーションやダッシュボードの加装パネルをデザイン変更してます。内外装でいえばそのぐらいです」
続いてパワートレインなどについても聞いてみた。
松井さん「アウトランダーPHEVは、モーターで走る領域が特徴で、そこの乗り味が世界的に好評をいただいています。エンジンは基本的に発電機を回すために駆動していますが、概ね走行時はモーターなので、トルクもあってなめらかでスムースです。ですがせっかくのEV走行時に、発電のためにエンジンが始動するとそのスムースさをどうしてもスポイルしてしまいます」
「そこで今回排気量を2リッターから2.4リッターにしてトルクを上げ、低い回転から効率よく発電することを可能としました。それにより、モーター走行時のスムースさをできる限りスポイルしないようにしました」
「発電しているときには、アクセル操作に対してリニアにエンジンが反応します。エンジンがかかった状態でも、モーターの気持ちの良い走りが堪能でき、運転が楽しめます。激的に変わっているので、そこを体感してほしいですね」
では、今回の肝となる動力の部分についても話を聞いてみた。
澤瀬さん「アウトランダーPHEVは、前と後のモーターを別々に駆動しています。これは登場時からそうなんですが、すごいポテンシャルがあって、じつはモーター制御の自由度が非常に高いんです。たとえば、前後のトルク配分に制約がなく、自由自在に理想(前50:後50)へ向かってトルクを配分することが可能です。あとはトルクの出し方(早さ)や応答性などモーター制御でいくらでも変えることができます」
「電動四駆はメカ四駆と違って色々なメカの特性の制約などを考えなくても良いので、やればやるほど、走りが良くなるというのがよくわかりました。どこまで設計を頑張るかで全然走りが変わりますね。われわれの得意分野を活かし、走りをしっかりして安全に快適に乗れることは当然ながら、四駆で前に進む力も大切ですが、ハンドル切ったら切った方向に進むというクルマとドライバーの一体感も大切にしました」
松井さん「三菱では、昔からゆっくりまっすぐ走っている領域からサーキット走っている場面でも、四輪のタイヤが一番働く状態を作るようにセッティングを重ねてきました。今回のアウトランダーPHEVはスポーツモードだけ開発を進めてきたわけではなく、意のままに走れる『クルマとドライバーの一体感』に基づいて設計しています」
澤瀬さん「ランサーエボリューションのときはアクティブヨーコントロールディファレンシャルシステム(旋回性能を向上させる機能。通称AYC)がついて、クルマの挙動などを上手くコントロールしていました。改良したアウトランダーPHEVには、その機能がない代わりにブレーキで左右の駆動制御を行います。そこの部分には、システムとしてできることが限られていますが、前後のトルク配分はカバーできるので、ランサーエボリューションよりクルマを振り回すことができますね。『雪上で横に乗ったときは、重たいけど昔のランエボみたい! 正直言ってもっと軽くなったら最高だよね』なんて声もありました。ランサーエボリューション10に関しては、楽しみながら開発していました。その頃の味が今でも活きていて、乗ると楽しいです」
松井さん「今回駆動力配分などを変更できるモード切替ボタンを追加しました。各モードの違いは、アクセル踏んだだけで大きく変わることが体感できます。指でパチパチ切り替えるだけなので、簡単で楽です。たとえばこういうモードの切り替えは、ある程度乗ってみて限界じゃないと差がわからないことが多いのですが、モーターのトルクの出方が違うからアクセルを踏んだだけでわかる。非常にクルマの性能としてわかりやすい商品になっています」
クルマの味付けの違い、モードの違いは電気駆動だから大きな可能性を秘めているとお二人は言う。
澤瀬さん「たとえば、エンジンのクルマでモードの違いを出すとします。エンジン反応やトランスミッションの変速レスポンスもあって切り替えボタンを押しても劇的にクルマが変わるように(エンジン音や、ハンドルの重さなど)味付けしようとすると違和感があるんですね。モーターだとそれがなく、ボタン1つでモード切り替えが違和感なく行えて、少しアクセルを踏み込んだだけでも違いがわかる。ここがエンジンとの違いですね。雪道にあったスリップを防ぐような制御や、スピード走行にあった加速性能の向上など作りやすいのも電気駆動だからこその特徴です」
「モーター駆動の楽しみや良さは、少しずつ認知されている気がします。電動化はクルマを楽しくするとわれわれ(開発者)は思っています。理論的にもそうですね」とお二人は笑いながら話す。
最後に、開発そのものは楽しかったかどうか伺ってみた。
松井さん「クルマの味付けって肝になる部品があって、パワープラントの動きは最たるものなんですね。ハードじゃなくてソフトの中でも組み方、走り込みによるいろんなチューニングなどで、クルマの性能やキャラクターが変わります。今回はそこをイジリたくさん走って、いろんな考え方で、議論をしながら今回やったことが面白かったですね。お客様が乗って、その違いを感じてくれたら嬉しい。四駆もそうだしサスペンションもそうですが、味にこだわりました。まずは、乗ってくださいというのがわれわれの思いです」