じつはハイブリッド車がエコじゃないかもしれない可能性

トータルコストでみるとガソリン車の方がエコ

 Well-to-wheelという考え方があります。井戸から車輪へ、という意味で、エネルギーが採取されて実際に動力になるまでの全体の効率を加味した燃費のことで、これを1km走行当たりのCO2排出量で現すのが一般的です。

 ガソリンの場合は、油田から採取した原油をタンカーで日本に運び、ガソリンに精製してタンクローリーでガソリンスタンドへ、というメカニズムになっていますね。そのときに消費するエネルギーも、実際の走行時の燃費に組み込むわけです。ライフサイクルアセスメント

 電気自動車の場合には、発電所で作った電力を送電線を通じて配ることになります。太陽光で発電すれば元のエネルギーはゼロに近いわけですが、石炭火力発電所や石油火力発電所を使ってしまうとそこで確実にCO2が排出されます。同じようにFCV(燃料電池車)も、水素を生成するために多くのエネルギーを使うとすれば、それは間違いなくCO2が排出されていることになります。

 燃費に相当するものは、Well-to-Wheelで出てきます。いろいろな算出方法があり、何を信じていいのかわからないのが本音ではありますが、ハイブリッドカーは30%ほど、ガソリンエンジン車よりもCO2の排出量が少なくなるというのが一般的です。ちなみに日本の電気自動車ではハイブリッドカーの半分、ガソリンエンジン車に対して60%少なくなります。またFCVはハイブリッドカーと大差ないデータになります。

 しかし問題はクルマが生産されるときに使用するエネルギーの大きな差であり、廃棄されるときの環境負荷です。そうしたクルマの生産・破棄時のエネルギーなどに、Well-to-Wheelをプラスしたものが、ライフサイクルアセスメントです。

 バッテリーというのは極めて多くのエネルギーを消費して生産されます。また破棄するときの処理も大変で、もしそのまま朽ち果てるまで放置するようなことになれば、有害物質が流れ出る可能性もあります。

 さらにモーターには大量の銅が使用されますが、見慣れているものの銅も一応レアメタルで、環境負荷が高い物質です。ちなみに太陽光パネルは生産時や破棄時に大量のエネルギーを消費することになります。

 ライフサイクルアセスメントでいえば、現在の時点ではノーマルガソリン車とEVは同等のCO2排出量であると言われています。今後バッテリーのリサイクル技術などが進歩することが予想できるので、おそらく10%〜20%程度はEVにアドバンテージが生れるとは思います。

 問題はハイブリッドカーやプラグイン・ハイブリッドカーで、小さいとはいえバッテリーとモーターを装備している上に、必ずノーマルエンジン車と同じようなサイズのエンジンやトランスミッションを持っていますね。それではノーマルのガソリン車に比較してアドバンテージがあるとは考えられません。

 そもそもハイブリッドカーのほとんどは、燃料をケチることで燃費データを稼いでいます。上手くケチるために、ハイブリッドシステムを活用している、といっていいかもしれません。ドライバーがアクセルを踏んでも可能な限り加速力を弱くし、また上り坂で速度を維持するつもりはなくダラダラと速度低下させます。

 つまり効率の高さで燃費が上がっているというよりも、セコくケチケチ使っていることが大きいんですね。加速が遅いということは当然運動エネルギーが小さいわけですから、自分の燃費が良くなるのは当然なんです。ただそうして引き起こされる渋滞、交通の流れの悪化は確実に存在しているので、他人の燃費を悪化させることになります。これではエコカーというより、自分さえ良ければOKというエゴカーですね。

 結局コストというのはエネルギーのことなんですね。高価になるのは多くのエネルギーを費やしているからです。現在ハイブリッドカーとノーマルエンジン車の価格差を、燃費の差額で埋めることができません。ということは、ハイブリッドカーのほうがエネルギーを多く消費していると推察できるわけです。もし省エネルギーをエコだと規定するなら、トータルコストからハイブリッドカーよりもノーマルガソリン車のほうがエコだとジャッジすることができますね。効率を考えるならシンプルなものが一番なんです。


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